ショルツ首相が決然と
「我々は時代の転換を迎えている。これは、それ以後の世界はそれ以前の世界とは同じものではなくなるという意味だ」
2月27日、日曜日の午前、緊急に招集されたドイツの臨時国会の演壇で、ショルツ首相が決然とそう言い放った。そして、ドイツがドイツたらんとして戦後70年ずっと掲げてきた信条を、こんなものは現実に合わないと言わんばかりに、あっさりと捨ててしまったのだ。このインパクトは大きかった。

実は、この日の国会は最初からドラマチックだった。まず、開廷時に国会議長が2階の傍聴席にいたウクライナ大使を紹介すると、議員の間から拍手が沸き起こり、そのままAfD(ドイツのための選択肢)以外の全ての議員が立ち上がって、2階の大使を見上げながらの拍手が続いた。
その拍手の中、やはり傍聴席にいたドイツ大統領がウクライナ大使に歩み寄り、大使をしっかりと抱き締めた。議会場の雰囲気は一段と高揚し、スタンディング・オヴェーションが続いた。ドイツ人とは、こういう芝居掛かったことをまるで恥ずかしがらずに本気でできるロマンチックな人たちなのだ。
この日のショルツ首相は、戦争に突入したのはドイツかと勘違いするほど悲壮な面持ちだった。そして、その彼が、戦後のドイツがさまざまな試行錯誤によって選んできた安全保障の方針を、180度転換させる内容を発表した。
それは時代の転換というより、戦後レジームの転換といったほうがよいかもしれなかった。しかも、その転換のスピードの何と迅速だったこと!