2022.03.06

三途の川、花畑、トンネルをくぐる…「臨死体験」をしているとき、脳の中では何が起こっているのか?

臨死体験や体外離脱、憑依などこれまでは心霊現象か虚言だと思われてきたことが、神経科学的に解明が進んでいることを紹介した駒ヶ嶺朋子『死の医学』(集英社インターナショナル)が刊行された。脳神経内科医で現代詩の書き手でもある著者に、臨死体験のさいにいったい脳の中で何が起こっているのかを訊いた。

[PHOTO]iStock
 

臨死体験とケタミン、LSD体験は似ている

――臨死体験の神経科学的な探究はどういう流れで進んできたのでしょうか。

駒ヶ嶺 バージニア大学のブルース・グレイソンが1983年に発表した"The Near-Death Experience Scale"という論文が大規模な科学的検討の始まりです。臨死体験では主に「認知」「感情」「超常現象」「超越」に関する4つの経験が起こります。「認知」というのはたとえばふだんより思考速度が速くなる、「感情」では宇宙との一体感に包まれる、「超常現象」は体外離脱体験、「超越」というのは亡くなった人や宗教的な人物と出会ったり、お花畑や川が見えてしまう、といったものです。臨死体験で起きる4つのなかでは体外離脱体験がもっとも多い。

「一度超えると引き返せない場所を越えずに戻ってくる」ということ、トンネルを通るという体験はどんな文化でも共通して語られたり、描かれたりしています――もっとも、こうした内容は特定の宗教教義とは合わないと言われており、臨死体験の報告率はアメリカでは15%、ドイツだと4%と教義や国・地域にとって割合は変わりますが。

やはりグレイソン先生が著者に入っている2019年の論文では、この4種類の経験を誘発する薬剤(向精神薬)を調べていくと、もっとも近いのはNMDA受容体拮抗薬であるケタミンだと書かれています。ほかはLSDやMDMA、シロシビンといった幻覚物質も近く、逆に遠いのは統合失調症やうつ病の薬でした。ケタミン体験と臨死体験の際に語られる言葉を比較しても似ています。つまり、臨死体験はNMDA受容体の拮抗作用で起きているのではないか、と。

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