2022.03.05
# エンタメ

“東京の地場産業”だった「アニメ制作」が、なぜかいま地方に続々進出しているワケ

「東京から遠い」はもう関係ない?
数土 直志 プロフィール

デジタルが解き放った「東京から遠い」という制約

地方にアニメスタジオが広がるもうひとつの理由は、2000年代以降急速に進むアニメ制作のデジタル化だ。

近年の東京圏以外での新設スタジオを見ると、CGスタジオの社名が目立つのに気づく。人気アニメ「BanG Dream!」シリーズを手がけるサンジゲンは金沢、京都、名古屋、神戸、福岡など東京以外で5拠点、イクサは名古屋、福岡、札幌、神戸の4拠点、グラフィニカも京都、札幌、福岡といった具合だ。

CGアニメでは、作品や素材の制作がパソコンのなかだけで完結する。さらに完成した素材はインターネットを通じてサーバーから場所を問わず取り出せる。物理的なやりとりが存在しないから、誰がどこで制作しても問題はない。スタッフ間の打合せもオンラインミーティングで可能だ。デジタル化の進展は、スタッフ同士が物理的に近くなければいけないという障害を取り払ったのだ。

このデジタル化の波は、手描きアニメの分野にも及ぶ。手描きアニメはアニメーターが紙と鉛筆で何枚ものキャラクターやシーンを描き、連続させて動いているように見せるものだ。多くの人にお馴染みのアニメの技術だろう。

アニメ業界ではこれも紙をタブレット、鉛筆をタッチペンに置き換えることで、やはりパソコン内で完成させるデジタル作画の技術を確立している。紙がなくなりネット上で受け渡しできるから、地方でも手描きのアニメーターが仕事を続けることが可能になる。

写真はイメージ/photo by iStock
 

ただ、アニメ制作効率化の本命とされるこのデジタル作画も、従来のスタジオでの導入には障害が多い。アニメーターの中には手慣れた鉛筆と紙を好む人も多く、一部でもアナログな部分を残すとデジタル作画の良さが発揮されないからだ。

しかし、ゼロから立ち上げる地方スタジオであれば、当初からデジタル作画を全面的に導入することもできる。

スタジオエイトカラーズでは、デジタル作画が出来ることを前提条件として採用活動を行った。本年中に本格稼働するスタジオでは東京のスタジオから仕上げなどの仕事を受けるが、それを全てデジタルで対応する予定だ。フルデジタル作画が強みになる。地方に進出した他のスタジオでも、デジタル作画での推進を掲げているところは多い。

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