2022.03.05
# エンタメ

“東京の地場産業”だった「アニメ制作」が、なぜかいま地方に続々進出しているワケ

「東京から遠い」はもう関係ない?
数土 直志 プロフィール

京都アニメーションの成功に続くには

もうひとつ、現在のアニメ業界の人材不足も地方スタジオが増えている理由だ。国内のアニメ制作本数が増加する一方で、労働環境の厳しさから業界を離れる人も少なくない。近年は慢性的な人手不足が問題となっている。各社は積極的な採用は続けるが、都内では新人レベルでも優秀な人材は奪い合いだ。

そこで注目されたのが、地方の中核都市である。サテライトスタジオが相次いだ京都、福岡、札幌、大阪はクリエイティブ系の専門学校や大学が多いことで共通する。その一方でこうした地域はアニメやゲームのエンタテイメント分野の就職先は十分でない。優れた才能を持ちながら全く別の業界に就職する者も多い。こうした学生を囲い込んで活用する狙いだ。

実際に福岡のプロジェクトスタジオQは地元の学校法人・麻生塾、ドワンゴ、スタジオカラーの共同事業であるし、2020年に札幌に設立されたウタリカは、学校法人吉田学園と連携、地元教育機関との連携は新たなトレンドだ。

 

人材育成環境の優位はこれまでにも例がある。1981年から京都・宇治市に本社を置く京都アニメーションは、『涼宮ハルヒの憂鬱』や『らきすた』、最近では女性層に支持が高いFree!シリーズといったヒット作で知られる人気スタジオだ。丁寧に作られた映像でアニメファンにお馴染み。そのクオリティの高さは、じっくり時間をかけた同社の新人教育体制に支えられている。

富山県南栃市のP.A.WORKSも人材育成で定評がある。ヒット作『SHIROBAKO』をはじめ原作から作品を開発するなど自立した経営も特徴だ。

昨今は東京のアニメスタジオでも人材育成に積極的になってはいる。しかし長年アニメスタジオにとって人材育成はリスクが大きかった。都内にはアニメスタジオが多く、人材流動が活発だからだ。教育に多くの労力、資金を投じて育てたスタッフがその技術を携えて転職するケースは少なくなかった。

しかし地方であれば、同じスタジオで長期間働くことを希望することが多く、時間や労力をかけて教育することもできる。京都アニメーションやP.A.WORKSのクオリティを支えるこの仕組みを、モデルにしたいと考える会社は多いはずだ。

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