「今でも自分を許すことができません」

陽子さんの中で悲しみ、そして問いの出ない答えが今なお続いていることは、看護学生への講義の中からも感じられた。
愛花は、私にとってものすごく大きな存在です。そして、私は、今でも自分を許すことができません
愛花ちゃんを何としてでも守ろうとし、それをやり遂げたかに見える陽子さんなのに、一体、自分の何を責めているのだろう? 講堂の学生たちが身を乗り出した。

「私が一番つらいのは、五体満足で愛花を産んであげられなかったことです」

医学的に見れば、染色体異常の子どもを妊娠するということは、すべての人に起きる可能性があって防ぐ方法は存在しない。そのことを陽子さんは百も承知だが、それでも湧きあがる自責の感情を断ち切ることはできないのだという。18トリソミーは高齢妊娠で増える傾向があるため、「あなたの卵子のせいだ」と言った身内がいたことも陽子さんを苦しめていた。陽子さんは、愛花ちゃんを38歳で出産していた。

愛花ちゃん出産してすぐの陽子さんと愛花ちゃん 写真提供/吉武陽子
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出産の時には、帝王切開をしたことで、母子ともに命が危なかった重大な危機を回避できた。それについても陽子さんは今、こんな風に感じていた。
「もし、あの時、先生たちがすぐに帝王切開をして、適切な処置をしなければ、私も愛花と一緒に死ねたんじゃないか、と思うのです」

看護学生たちにとり、この言葉は衝撃だったに違いない。聴いているのが、これからさまざまな人のぎりぎりの状態に立ち会うかもしれない看護学生だということもあって、陽子さんの言葉はどこまでも率直だった。「愛花ちゃんを追いたい」という思いを、陽子さんはずっと持ち続けているのだ。