ESG投資そのものの歴史は実のところ浅い。国連が支援する「PRI(投資責任原則)」という国際的な投資家イニシアチブが2006年に立ち上がったことがESG誕生のきっかけだ。
ESG投資に関して投資家が守るべき6つの原則から成り立っているPRIは、環境・社会・ガバナンス(企業統治)の三要素が資産運用に果たす役割の重要性を強調し、それらの要素の評価を投資プロセスに組み入れることを推奨する。
2021年12月現在、3400を超える機関投資家が同原則への賛同を表明しており、その運用規模は優に100兆ドルを超える。2010年台後半からESGはSDGsの盛り上がりと共に資産運用業界におけるトレンドになっている。

年金基金や保険会社、政府系ファンドは、その事業内容がSDGsに通じるものがあるため、積極的にESGを取り入れた。そうした機関投資家の中でも、特に欧州の投資家が先んじて先駆的な投資戦略を取り入れ始めた。
次に参画したのは彼らをクライアントとするのは大手運用会社(アセットマネジメント会社)だ。大手運用会社はこのトレンドを取り入れるために、投資先のESG分析を専門とするチームを組成したり、企業との対話を通じて影響力を高めるスチュアードシップ活動を専門とする人材を多数採用するなど、ESG運用体制を強化している。
日本においては主要な機関投資家が既にPRIへの署名を済ませており、各々ESGの要素を取り扱うプロダクトや運用体制に取り入れるなど、ESGの受容は一種の業界スタンダードとなっている。