自然破壊や環境問題など、世界各地で起きている出来事を独自の視点で捉える作家たち。ニュース映像や報道写真とは一線を画する、アーティストたちのメッセージをフィーチャーします。

Olaf Otto Becker

変わりゆく自然を記録、現代の環境問題を問う。

ボルネオ島の美しい原生林。マレーシアやインドネシアなど東南アジアでは、森林破壊が深刻。地球温暖化を加速させる要因になっている。

初めてアイスランドの氷河を撮影したのは1999年のこと。その3年後に再訪した際には雪が溶けて、同じ場所でもまったく様相が変わっていたことに衝撃を受けたと話すオラフ・オットー・ベッカー。以来、20年以上にわたり、アジア、南米、アフリカなど気候変動の深刻な影響を受けている国と地域を訪れ、大判カメラで撮影を続けている。

シリーズ“Reading the Landscape”の一つ、2012年から追いかけているマレーシアの森林破壊。

「時の流れとともに、世界の自然が織りなす美しい姿をアート作品として写真で表現しながら、人間は後世に何を残していくんだろうということに興味を持っています」

シンガポールの“Supertree Grove”。

今回紹介するシリーズ「リーディング・ザ・ランドスケープ」は、インドネシアやマレーシアの原生林、森林破壊された森、人工的な自然という3つの自然状態で構成。

インドネシア、中部カリマンタンの森林伐採。

「経済優先の人間活動によって、いま森はかなりの勢いで伐採されています。ここ最近では、都会に作られた植物園や人工的な自然空間も多いですが、もちろん動物や昆虫など、生態系は違いますし、非常に表層的です。限られた地球資源にこれ以上触らないこと。そして同じ意識を持った人たちと多くの対話を続けることが大切だと実感しています」

PROFILE
オラフ・オットー・ベッカー
1959年ドイツ生まれ。各国でランドスケープ作品を展示。現在「Landscapes. Signs of Change」展開催中。www.olafottobecker.de

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Ryota Kajita

人知れず現れる氷の表情が教えてくれた、
​環境の変化。

アラスカの湖や沼、池に現れる“フローズンバブル”。氷の下に閉じ込められたメタンガスや二酸化炭素が凍り、独特の幾何学模様が形成される。

アメリカ・アラスカ州、北極圏に近い街・フェアバンクスを拠点にする梶田亮太さん。日本の大学を卒業し、映像関係の仕事に携わっていたが、アラスカ先住民の村を旅したことをきっかけに、その自然と人々の営みに魅せられた。現地の大学・大学院でジャーナリズムや映像、写真を学び、以来、アラスカで作家活動を行っている。

「Ice Formation」シリーズは「ナショナル ジオグラフィック」誌にも掲載された代表作。アラスカに厳しい冬が訪れる直前、限られた期間にだけ湖や沼、池に現れる“フローズンバブル”をモノクロ写真で捉えた作品群だ。

「Ice Formation」シリーズは世界的な写真アワード「Lens Culture Earth Awards 2015」のファイナリストに選出。

「冬、散歩で訪れた沼で見つけたのがきっかけでした。凍った沼に、直径30cmから1mくらいの模様みたいなものがあって、氷の中に閉じ込められた何かの結晶のよう。すごく美しくて、不思議で、他の池でも探してみたら、それぞれ造形も大きさも違って、ひとつとして同じものがない。自分だけの宝物を見つけたような興奮が病みつきになって、以来、10年以上撮り続けています」

“フローズンバブル”は、水底のバクテリアが出すメタンガスや二酸化炭素の泡が凍った水面の下で行き場を失い、徐々に凍結したもの。一般的にメタンガスは地球温暖化を引き起こすものと考えられ、その警鐘を鳴らす作品であるとの声もあるが、梶田さんは違った形で環境について気づきを得たという。

厳冬期の夜、街の光を受けてたたずむ造形物を撮影したシリーズ「Midnight Light」シリーズにも取り組む。

「“フローズンバブル”が現れるのは湖や池が結氷するほど気温が下がる時期ですが、雪が積もると隠れてしまうので“気温が低いけど雪が積もらない”というとても限定的な条件が必要。年によって時期が前後することもあって、以前より能動的に気温や季節の変化に気を配るようになりました。自分の暮らしている街の気象や環境の変化に敏感になるにつれ、徐々に世界的な気候変動についても考えを巡らせるようになりました」

近年、フェアバンクスの冬も以前ほど冷え込まなくなったと梶田さん。

「マイナス40度というのも当たり前でしたが、最近はそんなに寒くならない。気候変動の影響かどうかは明言できませんが、少なくとも変化は肌身で感じます。作品を通して、身近な環境の変化を考えるきっかけを得てもらえたら、それはとても嬉しいことですね」

PROFILE
かじた・りょうた
岐阜県生まれ。図書館情報大学卒業後、東京の映像会社勤務を経て渡米。州立アラスカ大学フェアバンクス校で写真を学ぶ。ryotakajita.com