2022.03.14

地元住民“戦慄”の「トラ脱走事件」はどんな被害をもたらしたのか、その顛末

昭和事件史(4)後編
ミゾロギ・ダイスケ プロフィール

篠原さん宅の近くにトラがいると考えた警察は、猟友会のメンバーを加えた約20名で山狩りを決行。山林に犬の死骸の一部を発見したことを足がかりに、28日の12時20分頃、遂にトラに遭遇する。間もなくして、複数の銃声があたりに響き渡ると、トラはその場に崩れ落ちた。2頭目もまた、生きてオリには戻らなかった。

「逃走トラ、ついに射殺 27日目 飼い犬食った後」(毎日新聞1979年8月28日付夕刊)  

その後、A寺の住職は、報道陣の前に姿を現し、巻紙に書かれた謝罪文を読み上げたが、記者の質問にはほとんど答えなかった。また、2頭のトラは寺の裏側に埋葬された。一方、この「トラ脱走事件」で、出演予定のイベントが中止となったRCサクセションは、オスが殺されて約2週間後に都内で開催したライブを「トラ追悼コンサート」と銘打った

幸い、人間に直接の被害はなかったが、「トラ脱走事件」の捜索にはのべ8220人もの人員が駆り出され、多額のコストが税金から捻出された。やがて、A寺は猛獣の飼育をやめ、動物たちは他の施設に引き取られていった。

この事件は、猛獣の飼育・保管に関する法整備が厳しくなるきっかけとなったともいわれる。

現在、日本の法律では、人に危害を加えるおそれのある危険な動物とその交雑種は「特定動物」とされ、トラはもちろん、クマ、ワニ、マムシほか、哺乳類、鳥類、爬虫類の約650種が対象になっている。そして、法改正により2020年6月より、「特定動物」の愛玩目的等で飼養が禁止された。もはや、個人がトラを飼いたいと思っても、合法的に飼うことができないのである。

 

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