付き合いたてのカップルのように

私たちは言葉もろくに通じないのにジェスチャーと筆談で一緒にキエフ中の観光名所を周り、記念撮影をしたり、アイスクリームを食べたり、まるで付き合いたてのカップルのように爽やかな王道デートのような観光案内をしてもらった

キエフ郊外にあるユースホステルから乗り合いのバンでダウンタウンへ向かう。バンの先頭にはまだ8歳くらいの少年がチラチラ振り返っては微笑んでいた。写真提供/歩りえこ

日本人でも外国人でも基本的にはどの国の男性も同じだが、知り合ったばかりの男性はなぜこんなにも優しいのだろうか? ありがたいことに今まで初対面の男性が優しくなかった経験がほぼない。男女ともにお互いさまであるが知り合って3年も経つと新鮮味がなくなり、ときめきもなくなってしまいがちだ。異国にいるという危機感は、もちろんいつも気にかけているが、特定のパートナーもおらずフリーなうちは恋愛やときめきを楽しんでなんぼ、と思っている。

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やがて、日が暮れてタラスとの楽しい時間も残りわずかとなってきた。もうウクライナを離れなくてはならない。ご飯を食べたり、もう少し一緒にいたいな、名残惜しいな……と思ったところで、シンデレラタイムとなってしまった。まるでカボチャの馬車が迎えに来るように、ヨーロッパ中を縦横無尽に走るユーロラインズバスがバスターミナルに乗り入れてきた。

タラスは長い脚をカクッと折り曲げると私を思いっきりハグした。バスの運転手がその様子を見守りつつも、クラクションを鳴らして出発の合図をする。私が乗り込むとゆっくりとバスは動き始めた。

彼は映画の別れのシーンのように手を振りながら走り出すと、バスとどんどん距離が開いてあっという間に姿が見えなくなってしまった。