「40代、50代の女性の恋愛は見たくない」と言われて

――本作は資金集めに苦労したと聞きました。

中村:はい。子どもとの愛情に恵まれなかった恵と母親の愛情に飢えていた雄二は、「親子の愛に飢えている他人同士」という共通点も手伝って恋人同士のような関係にもなるのですが、映画会社にプレゼンテーションをして資金集めをする段階で、その設定に対して年配の男性達からの猛反発がありました。「おばさんと若い男性の恋愛は見たくない。おばさんなのにエロチックな要素があるのが気持ち悪い。この部分は脚本から抜いてもらえないか」と。「母が性的な存在であることが気持ち悪い」「道徳的に良くない」とも言われました。

例えば、中年男性が若い女性と浮気をして離婚したとしても世間はそこまでバッシングしませんが、逆はバッシングを受けます。それと同じ感覚なのではないでしょうか。

『親密な他人』より
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――確かに、40代、50代の女性が恋愛をする映画は日本ではあまり目にしませんね。

中村:そうなんです。30代から脚本を書き始めて40代になって感じたことは、大人の女性が恋愛をするという話があまりにも少ないということだったんです。そしてそのことは、資金集めをする過程で「40代、50代の女性=母でならなくてはならない」、そして「母が恋愛するのは気持ち悪い」という男性の映画関係者の感情から来るものだったんだということに気が付きました。

海外では、イザベル・ユペール、ジュリエット・ビノシュ、ニコール・キッドマンのような「母ではあるが、女性としてのセクシーさもあり、恋愛において現役感がある」という女優たちはたくさんいます。そして、そういう女性たちが主人公の映画は多いです。

今回の主人公の黒沢あすかさんは実生活で3人の男の子のお母さんですし、お母さん役が似合います。でも、黒沢さんの魅力はそれだけではない。女性としての魅力もあり、多面性のある役を演じられる方です。黒沢さんに限らず、同じ世代のいい女優さんはたくさんいますが、良妻賢母の役が多い。彼女たちの魅力をもっと発揮できる場所が必要なのではと思っていました。
 
この映画はおじさんと若い女の子の話だったらすぐに企画は実現したのかもしれません。でも、「大人の女性が主人公」という設定は絶対に曲げたくなかった。資金集めには難航しましたが、助成金が下りたことで予算を賄うことができ、劇場公開することができました。