2022.03.14

「こんな馬鹿な戦争」…未来を見通しながらも、運命に翻弄された真珠湾攻撃隊員の悲劇

神立 尚紀 プロフィール

もはや引き返すことはできない

機動部隊の各母艦では、第一次の発艦後、すぐに第二次発進部隊の準備が始められた。第二次発進部隊制空隊(零戦隊)指揮官の進藤三郎さんは語る。

 

「第一次の発進を見送ったときにはさすがに興奮しましたが、いざ自分が発進する段になると気持ちも落ち着き、平常心に戻りました。出撃前、司令部から、この作戦で空母6隻のうち3隻、飛行機半数を失うとの見積もりを聞かされていて、死を覚悟しましたが、それほど悲壮な気分にもなりません。

真珠湾に向け飛行中、クルシー(無線帰投装置)のスイッチを入れたら、ホノルル放送が聞こえてきました。陽気な音楽が流れていたのが突然止まって、早口の英語でワイワイ言い出したから、よくは聞き取れませんが、これは第一次の連中やってるな、と奇襲の成功を確信しました」

第二次発進部隊制空隊指揮官として空母「赤城」をまさに発艦する進藤三郎大尉の搭乗機

オアフ島北端、白波の砕けるカフク岬を望んだところで高度を6000メートルまで上げ、敵戦闘機の出現に備える。オアフ島上空には、対空砲火の弾幕があちこちに散らばっていた。

「それを遠くから見て、敵機だと勘違いして、接敵行動を起こしそうになりました。途中で気づいて、なんだ、煙か、と苦笑いしましたが」

弾幕の煙は、遠目には1つ1つが黒い点々に見える。同じく第二次発進部隊「赤城」艦爆隊の大淵中尉(本島自柳さん)は、それらの黒点を認めて、前席の操縦員・田中義春一飛曹に「おい田中、あれは防塞気球かな」と声をかけ、「分隊士は呑気だな、あれは敵の弾幕ですよ」といわれたことで、はじめて戦闘を実感したと回想している。

第一次に遅れること約1時間、真珠湾上空に差しかかると、湾内はすでに爆煙に覆われていた。心配した敵戦闘機の姿も見えない。艦爆隊は、第一次発進部隊が撃ちもらした敵艦を狙い、本島さんは急降下爆撃で敵巡洋艦に250キロ爆弾を命中させている。零戦隊を率いる進藤さんは、各隊ごとに散開し、それぞれの目標に向かうことを命じた。

「艦攻の水平爆撃が終わるのを待って、私は『赤城』の零戦9機を率いてヒッカム飛行場に銃撃に入りました。敵の対空砲火はものすごかったですね。飛行場は黒煙に覆われていましたが、風上に数機のB-17が確認でき、それを銃撃しました。高度を下げると、きな臭いにおいが鼻をつき、あまりの煙に戦果の確認も困難なほどでした。それで、銃撃を2撃で切り上げて、いったん上昇したんですが」

銃撃を続行しようにも、煙で目標が視認できず、味方同士の空中衝突の危険も懸念された。進藤さんは、あらかじめ最終的な戦果確認を命じられていたので、高度を1000メートル以下にまで下げ、単機でふたたび真珠湾上空に戻った。

「立ちのぼる黒煙の間から、上甲板まで海中に没したり、横転して赤腹を見せている敵艦が見えますが、海が浅いので、沈没したかどうかまでは判断できないもののほうが多い。それでも、噴き上がる炎や爆煙、次々に起こる誘爆のすさまじさを見れば、完膚なきまでにやっつけたことはまちがいなさそうだと思いました。これはえらいことになってるなあ、と思いながら、胸がすくような喜びがふつふつと湧いてきましたね。

しかしそれと同時に、ここで枕を蹴飛ばしたのはいいが、目を覚ましたアメリカが、このまま黙って降参するわけがない、という思いも胸中をよぎります。これだけ派手に攻撃を仕掛けたら、もはや引き返すことはできまい。戦争は行くところまで行くだろう、そうなれば日本は……」

雷撃を受け、着底する戦艦「カリフォルニア」
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