「あ、私と同じことしている人がいる」の共感

もう高いヒールを履くのをやめようかな、と思った時期にちょうど読み始めたのが、mimiに連載されていた吉田まゆみさんの『アイドルを探せ』(連載期間1984~1987年)だった。

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吉田さんの作品は、『年下のあンちくしょう』(1975年)から大好きで、『雨にぬれてホットミルク』(1977年)、『れもん白書』(1979年)も欠かさず読んでいた。縦ロール系の乙女チックな主人公ではなく、当時の少女マンガにはなかったリアル感がが新鮮だった。例えるなら、ちょっとおしゃれな先輩の恋愛をそのまま見ているような感じ。さらに、そのときの流行が上手くシンクロしていて、ちょっとサブカルの香りがするところも好きだった。

中でも、今回ご紹介する『アイドルを探せ』は、80年代の浮かれた時代の中で、その空気は体感しながらも本流にはイマイチ乗り切れず、それでもなんだかんだと出会い、恋に落ちていくフツーの人たちの話を描いている。

主人公の藤谷知香子は、モテ・ヒエラルキー上位に入らないちょい地味な女子短大に入学した。念願の一人暮らし。でも、マンションではなくボロアパート。そこの住人のセクシー成分多めのお姉さまキャラの武原千明。彼女は本当はバスガイドなのに客室乗務員(当時はスッチーとも呼ばれた)や女子大生と偽ってしまうこともたびたび……。さらに同じ短大に通うマンガ家志望の甘露寺恵もアパートの住人だ。見た目も好きなモノも違う3人だが、共通点があった。それは、男性と深くつきあったことがなく、未だに初体験を済ませていないこと。そんな3人の恋の行方を中心に描いている。

本当はバスガイドなのに、女子大生に化けるというシーンに出てくる。『アイドルを探せ』吉田まゆみ/講談社

バブル時代というと、いとも簡単に恋が成就して、次々に終わっていくイメージを持っている人もいるかもしれない。でも、それは本当に一部の人だったと思う。知香子や千明、恵の恋もどこか切ない。「あ、私もこれに似たことあったな……」と、再び読み返し、青かった時代を懐かしく思い出してしまった。でも、だからと言って、ウェットな湿度は少なめだ。明るいのに切ない、そこが吉田まゆみマジック。独特なおしゃれな雰囲気を維持したままリアルを語れるところも魅力だった。