うますぎる画力と、物語から聞こえるユーミン

1990年代に担当だった鎌倉ひなみさんはこう話す。

吉田まゆみさんは、とにかく恋愛を描くのが上手いのです。『アイドルを探せ』よりも後ですが、『mimiカーニバル』で私が新人に近い頃に『ロックウェルが笑っている』という読み切りを書いていただいたんですね。新人の私の話もじっくり聞いてくださり、浮気や三角関係といった難しい題材も、感情を乗せて描いてくださいました。恋愛をしているときの女性の感情の再現性が驚くほど高いというか。なんというか、ユーミンの歌を聴いて、共感する感覚とも似ているかもしれませんね」

確かに、吉田まゆみさんの漫画を読むと、不思議なほどユーミンが聴きたくなる。他にも、サザンオールスターズや山下達郎など、当時、ドライブデートで欠かせなかった音楽が吉田さんの物語からは聴こえてくるのだ。実際に、吉田さんはユーミンと交流があったらしく、そんなところも作品からユーミンを感じる理由だったのかもしれない。

恋の些細な失敗も丁寧に描く吉田さんのマンガ。そして、全体を通すと不思議なほど、ユーミンやサザンなど80年代の音が聞こえてくるマンガでもある。『アイドルを探せ』吉田まゆみ/講談社
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さらに、鎌倉さんは吉田さんの画力の素晴らしさが印象に残っていると話す。

「カラー原画の主線を紫色のクレパスで描いたり、モノクロ原稿で拡大コピーを使用して印象が残る原稿を仕上げたり、画期的な試行も数多くされた作家さんです。通常拡大コピーして荒く使用したりすると、デッサンが狂って見えたりすることもあるんですね。でも、吉田さんの作品にはそれがないんです。あ、これは絵がしっかりしているからなんだ、と気づきました。しかも、絵は女性だけでなく、男性にも好まれる性別を越えた魅力も持っていますよね」

実は、『モテキ』『アゲイン!!』のマンガ家の久保ミツロウさんは、吉田まゆみさんのアシスタント経験がある。アシスタントにと紹介したのは、鎌倉さんだった。

「久保さんは、新人のときから絵がとても上手だったんです。なので、アシスタントをするなら絵がとても上手い方の仕事場がいいなと思って。吉田さんは安心してご紹介できました」(鎌倉さん)