2022.03.16
# ロシア

ロシアへの経済制裁が「まだ十分に効果を発揮していない」これだけの理由

カギは石油と天然ガスの「禁輸措置」
加谷 珪一 プロフィール

禁輸措置を実施しなければ効果は不十分

今のロシア経済について留意する必要があるのは、すでに戦時体制に突入しているという現実である。このまま制裁が続けば、平時の感覚では想像を絶するダメージがロシア経済に及ぶはずだが、国家というのは戦争モードに入ると、従来の常識や価値観を一変させてしまう。戦時中の日本を考えてもらえば分かりやすいが、戦時体制に入ってしまうと、常識では考えられないほどの困窮を政府が国民に強いる可能性があり、その分だけ経済的にギブアップさせるのは容易ではなくなる。

この話は裏を返せば、ロシア経済を完全に麻痺に追い込むためには、石油と天然ガスの禁輸措置が必須ということになる。この措置が実施されるとロシア経済は外貨を獲得する手段の大半を失い、万事休すとなる。だが石油と天然ガスの禁輸措置に対する西側の対応は一枚岩とは言い難い状況だ。

 

米国はロシアからのエネルギー禁輸措置を打ち出したものの、欧州は慎重な姿勢を崩さず、現時点で禁輸に踏み切ったのは米国のみである。米国は石油と天然ガスの産出量で世界1位となっており、国内で消費するエネルギーの大半を自国で産出できる。ロシアを含む海外からの輸入は安定供給の維持と価格調整が目的であり、極論すれば輸入を打ち切っても大きな問題は発生しない。

一方、日本と同じくエネルギーの大半を外国に依存する欧州はそうはいかない。特にロシア産天然ガスへの依存度が高いドイツはロシアからのガス供給の途絶を回避したいと考えており、全面的な禁輸措置には反対している。

仮にロシア産天然ガスの全面禁輸を実施すれば、ロシア経済には致命的な打撃を与えられるが、欧州経済も大ダメージを受け、株価の暴落や、全世界的な景気後退を招く。天然ガスの禁輸措置はまさに「諸刃の剣」であり、ロシアに多くを依存している現状において、全面的な禁輸措置に踏み切るのは難しいだろう。

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