大人も読むべき「受験参考書」 マニアが選んだ「オススメの4冊」を大公開!

当時とは違った「楽しみ方」がある

新年度が近づき、大学受験に向けてギアを入れ始めた高校生や学びなおしを意識する社会人も増えてきました。そんな3月23日、学習参考書の出版社を舞台にした漫画『ガクサン』の1巻が発売されます。

そこで漫画の一部監修を手がけている参考書マニアで学習塾の代表を務めており、さらには『最強の頭脳 日本一決定戦! 頭脳王』(日本テレビ系)にも出演経験がある粂原圭太郎さんに、「大人が読んでも学びが多い学習参考書(ガクサン)」をセレクトしていただきました。

常識がまるで違う! 独特な古文の世界

■荻野文子『マドンナ古文常識217 パワーアップ版』(学研プラス)

 

「古文は何を言っているかわからない」

「つまらないから嫌いだ」

学生時代、古文が嫌いだった方はたくさんいらっしゃると思います。最近では実生活に役立つ学問、いわゆる“実学”を学ぼうという風潮が強くなっており、たとえば家庭科では「資産運用」の時間がはじまります。その一方で、「実生活では直接役立たない、古文を学ぶ意義はあるのか?」という声も高まってきている印象があります。

しかし僕は、こんな時代だからこそ古文を学ぶ意義があると考えます。日本には、島国ゆえ他民族との交流が少ないなか、長い時間をかけて培われてきた文化があります。そして当然のことではありますが、1000年前の平安時代にも、僕たちの先祖は生きていたわけです。当時使われていた言語や文化を古文から学ぶことは、自分のアイデンティティの根っこを確認することにもなるでしょう。

現在の「令和」という言葉も、万葉集が出典です。「使える学問」だけが学問ではありません。実学が重視されている時代だからこそ、古文のような学問を学ぶことは、とても意義深いのではないでしょうか。

古文の世界を理解し始めると、そこにはものすごく楽しい世界が広がっていることに気づきます。例えば、平安時代の恋愛。この『マドンナ古文常識』は「平安時代の恋愛と結婚」というパートから始まりますが、当時の貴族の恋愛の形は、今とはまったく違っていました。

まず男性が女性を「覗き見」したり、彼女の噂や評判を耳にしたりするところから恋が始まります。男性は相手の自宅を覗き、風で御簾がめくれてチラッと見えた横顔を目にして、その女性に興味を持つ思うわけです。それから和歌を詠んで互いに送り合い、関係を深めていきます。その後男性が三夜連続で女性の家に通うことで、正式な結婚とみなされました。

結婚した後も同棲することはほとんどなく、「通い婚」といって夜に男性が女性の元を訪ねるスタイルでした。送り合った和歌の中には、「相手のことが好きで好きでたまらない」という気持ちが伝わってくるものが多く残されています。それはまるでJ-POPの歌詞のようで、時代や文化が変わっても、人を思う気持ちは変わらないのだとしみじみ思います。

そういった古文の世界を、読者が楽しめるように紹介してくれる『マドンナ古文常識』、とてもオススメです。実際に私が受験勉強を教えていた生徒さんの中にも、この本で古文の世界に興味を持って「古文が好きになった!」という人がたくさんいます。

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