突然の姿勢の変化が意味するもの
ウクライナへの軍事侵攻で世界から経済・金融制裁を受けるロシア。日本も歩調を合わせた厳しい措置で臨み、日米欧の包囲網によってロシア国債はデフォルト(債務不履行)危機が迫る。こうした中、気になるのはロシア経済破綻後の北方領土交渉の行方だ。ロシアは強硬姿勢を崩さないが、国力が急速に減退した際には態度を変化させ得るとの見方も出ている。はたして、岸田文雄政権は「チグハグ外交」から脱皮することはできるのか。

「ロシアによる法的根拠のない占拠という認識であり、不法なものだ」
林芳正外相は3月8日の記者会見で、近年の政府見解で控えてきたロシアによる北方領土の「不法占拠」との表現を復活させた。北方領土問題を含む日ロ平和条約交渉への影響を考慮し、安倍晋三政権から抑制してきた表現の転換は、政府の対ロ姿勢の変化をうかがわせる。岸田首相も7日の参院予算委員会で、安倍政権が控えていた「わが国の固有の領土、わが国が主権を有する領土」との表現を用いた。
こうした姿勢の変化を全国紙政治部記者が解説する。
「岸田政権はロシアのウクライナ侵攻で条約交渉の停滞は避けられないと判断し、それならばロシアに配慮する必要はないと表現を転換することになりました。日米欧の対ロ制裁でロシア経済が弱っていけば、北方領土交渉でも新しいアプローチがとれるかもしれないと見ているのでしょう。
ただ、とても十分な戦略が練られているとは思えません。これまで安倍・菅政権が官邸主導で進めてきた外交について、外務省が巻き返しを図っています。岸田政権としては、前政権を否定できる点において独自色を出せるということです」