一時点のデータでは不十分
現在、日本では多くの学力調査が行われている。2007年から開始された全国学力・学習状況調査(以下、全国学力テスト)を筆頭に、都道府県・市町村教育委員会の中には独自の学力調査を実施する自治体も少なくない。
もっともほとんどの学力調査は、実施した時点の学力を調べ、「2022年度4月の全国の小学6年生の算数の正答率は70%でした」と報告し終わりである。次年度になれば、せっかく取得したデータは見向きもされず「死蔵」されていく。
もちろん、ある時点の学力実態を知ることにも意味はある。たとえば新型コロナウイルス感染症による全国一斉休校前後の学力実態が比較できれば、休校措置が子どもたちの学力にどのようなダメージを与えたか議論できる。
もっとも以前の記事1で取り上げたように、日本は学力の変化も把握できず、子どもの家庭環境も調べない学力調査を繰り返してきたので、このような議論をすることは難しいのだが…。

幸い2021年度からは、学力の変化を把握できる経年比較調査と、子どもの家庭環境を把握する保護者調査が同時に実施されることになった。その意味では全国学力テストには改善の兆しが見える2。
ただ、全国学力テストだけでは十分ではない。なぜならこの調査は、あくまである一時点の学力実態を調べる定点観測を目的としているからだ。やはり定点観測だけでは駄目で、同じ子どもの学力の「変化」を捉える学力調査も必要なのである。