2022.03.26
# 学校・教育

「肝心なことがわからない」学力調査、専門家が憂う“あまりに課題が大きい”現実

「朝食と学力の関係」で考える
川口 俊明 プロフィール

パネルデータ、整備のための四つの課題

ただパネルデータを整備するには少なくとも四つの課題がある。

第一に、データ整備は最優先の課題である。やっかいなことに、教育行政が持っている学力調査のデータは、相当に「汚い」状態であることが多い。

たとえばパネルデータを想定していないため、異なる年度の学力調査の結果を接続するには、氏名を手がかりにするしかない。ところが肝心の氏名は標準化された手続きに沿って入力されておらず、年度や学校によってバラバラだったりする。

たとえば「川口俊明」が、「川口 俊明(姓名のあいだに半角スペース)」だったり「川口 俊明(姓名のあいだに全角スペース)」だったり「かわぐちとしあき」だったりするのだ。一つの学校ならせいぜい百数十名だから手作業でも修正できるが、数千・数万のデータを確認しながら接続する作業は、率直に言って悪夢である。

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第二の課題として、データ整備の一方で、個人情報の保護も重要だという点を指摘したい。個々人の情報を蓄積していくと、それは個人情報の塊になっていく。氏名のID化といった対応は当然施すが、その程度では個人を特定することが不可能とは言い切れない。

現在、教育のデジタル化の一環として、子どもたちの教育データの利活用が議論されているが、これも個人情報の観点から見ると似たような課題を有している10。個々人の変化を捉えるデータを整備するとともに、得られたデータを誰が/どのように利用するのかといった法整備も重要なのだ。

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