国立公園の豊かな自然は、放っておくだけで守られる種類のものではありません。とくに屋久島は世界遺産でもあり、毎年多くの観光客が訪れる場所。人の手で意識的に守りつづける必要があるのです。いま、屋久島の自然を守るためにできること。それに向き合っている人たちに会う旅へ。今回は、屋久島ガイドの田平拓也さんと屋久島自然保護官をご紹介します。
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屋久島ガイド 田平拓也
1976年、長崎市出身。屋久島で林業に従事したのち、ガイドカンパニー「旅樂」を設立。屋久島のガイドのほか、撮影コーディネーター、ドローンカメラマンの顔ももつ。ほかに「GALLERY TABIRA」も運営。森の写真展、森の音楽会など、さまざまなイベントも開催している。
水の流れを追うことで地球を体感できる島
田平拓也さんと森を歩く。
ヤクスギランドの奥、太忠岳へとつながる登山道の途中にある小花山歩道。屋久島で長くガイドをしている田平さんに「ずっと残したい風景は?」と尋ねると、少し考えた後で答えてくれたのが、この場所だった。
国立公園内にありながら他のスポットに比べて人も少なく、屋久島中を案内してきた彼にとっても特別な場所だという。その理由は、縄文杉のようなタレントがおらず、森そのものの姿に目が行きやすいため。
「ここは複層林。さまざまな種類や世代の木々が交ざりあって育っている場所です。だから木々同士のつながりも見えやすい」
ほら、たとえばあそこ、と彼が指差した先には立派な屋久杉。ただよく見ると、どう見ても杉ではない木が幹から出ている。
「着生植物たちです。ナナカマド、ヤマグルマ、サクラツツジなどが屋久杉から芽吹いて育っています。なかには19種類の植物が着生している屋久杉もあります」