『こどものおもちゃ』と内面ヒーロー

平成の不朽の名作『こどものおもちゃ』を見てみよう。『こどものおもちゃ』は、小学生女児向けの雑誌『りぼん』で連載されていたにもかかわらず、子役ブーム、学級崩壊、家庭内不和、離婚、シングルマザー等の社会問題を描く。『りぼん』の雰囲気とは裏腹のシビアな設定にもかかわらず、小学生ながら人気子役タレントである主人公をはじめとするキャラクターの底抜けの明るさと強さが多くの女の子の心を惹きつけていた。

『こどものおもちゃ』1巻

この物語、序盤では『こどものおもちゃ』の主人公・小学生の紗南は、同級生の問題児である羽山の家庭の問題に携わってゆく。が、その先で物語が進むにつれて、紗南自身も自分の過去にトラウマがあったことを発見する。一見明るそうに見える紗南と羽山は、どちらも過去にトラウマや精神的な弱さを隠し持っている。つまり紗南と羽山は、自分たちの内面の発見を通して、恋愛関係になってゆく。

ここから見えるのは「少年の弱さに目を向けた先で、自分の弱さを発見する少女の姿」だ。

-AD-

『こどものおもちゃ』を読んでみると、平成の少女漫画に登場する主人公は、弱いヒーローに自らを投影していたのではないかと考えられる。つまり彼女自身の弱さがすくわれる気配がないことを悟り、まずは少年の弱さをすくっていたのではないか。考えてみると、「白馬の王子様」というのは、一見かっこよくていい想いをさせてくれそうだけれど、その一方で、自分の内面に深く関わっているかと言われれば、そうでもない。

1990年代、つまり平成という時代の幕開けから始まる、アダルトチルドレンという言葉や精神分析等の思想の流行を鑑みても、「表面的な社会的ステータスなどの幸福だけでなく、内面に目を向けて幸福になりたい」という思想が広まっていた。その時、少女漫画ははじめて「男の子にも女の子の内面を見てほしい」「内面を深く理解しあった上で恋愛関係になりたい」「だけどなかなかそれは達成されないから、だったら自分が男の子の内面を見て彼の内面からすくうことのできるヒロインになりたい」という欲望を発見したのではないだろうか。

「自分の内面を受け入れてほしい」なんて欲望はもしかすると、ただお金持ちでやさしくてかっこいい白馬の王子様を発見するより、もっと難しいことかもしれないけれど。私たちは少女漫画を読み、少女の欲望とその挫折を知る。平成が終わり、次の時代に変わってゆくとき、少女たちは何を夢見るのだろうか。