15年以上仕事と向き合ってきて気づいたこと

自己紹介が遅れました。東畑開人と申します。東京に漂う小部屋のひとつで、カウンセリングルームを開業している心理士です。

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オフィスがあるのは、山手線の新しくできた駅から10分ちょっと歩いたところ、大昔は寺町だったらしく、お寺やお墓が多い地域です。昔ながらのパン屋や昭和レトロな喫茶店、謎のブティックが並ぶ古い商店街の一角に、オフィスが入居している小さなビルはあります。

部屋は2つです。
1つはパソコンがある事務室で、こちらではカウンセリングの記録を書いたり、帳簿をつけたり、原稿を書いたりしています。ごちゃごちゃと散らかっていて、正直、人に見せられません。タバコを吸いに、ベランダに出られるのもこちらの部屋だけです。

もう1つが面接室。僕が座る緑の椅子と、クライエントが座る灰色のソファ。それから、横になりたい人向けの青いカウチがあります。あとは低い本棚と小さなガジュマルの鉢植えが置いてあるだけのシンプルな部屋です。掃除や片づけは苦手ですが、こっちの部屋は頑張って掃除機をかけています。

今、僕は39歳。ほかの職業でも同じだと思いますが、心理士としても「中堅」と呼ばれるような年齢です。
22歳から訓練を受け始め、25歳で臨床心理士の資格を取りました。学校でスクールカウンセラーをしたり、病院の心理士をしたり、いろいろなところで働いてきました。かれこれ15年以上この仕事をしている計算になります。

39歳、中堅心理士。
もう若手ではないけれど、まだまだベテランとも言い難い、タフな時期です。
若いころに憧れたレジェンド心理士のようにはなれそうにない、と気がつく時期です。長い教育と訓練の果てに、魔法使いみたいだった先生のようになれるわけではなく、自分はどうやらありふれた心理士としてやっていくしかないのがわかってくる。
かといって、ベテランのように安定したポジションがあるわけでもない。5年後、10年後に自分がどうなっているか、全然わからないし、保証もない。だから、サバイブするために小舟を漕ぎ続けなくてはいけません。

それだけじゃない。体力は落ちてくるし、細々とした事務仕事をたくさん振られる。若くて優秀な後輩が頭角を現してくるし、先輩はまだまだ元気でこちらは頭が上がらない。中堅ならではのつらいことがいっぱいあります。

と、いささか悲観的なことを書いてきて、これはこれで本音なのですが、実はこっそり思っていることもあります。
若手とベテランがいやな思いをするかもしれないから大きな声では言えないけれど、どうしても思ってしまう。中堅って、本当はゴールデンタイムなのではないか。
確かにタフではあるのだけれど、案外よい時期なのではないか。