コロナ禍で崩れた「つながりのバランス」

――具体的には、どのような“つながり”がありうるのでしょうか?

東畑 他者とつながりには2つの種類があると思うんです。それをこの本では「シェア」と「ナイショ」と分別しました。社会学の言葉でいう「共同性」と「親密性」です。

「シェア」とは文字通り、シェアすることで生まれるつながりです。同じ釜の飯を食った仲間や、子育て情報をシェアするママ友などがそうですね。このつながりは大抵複数人で成り立っていて、お互いの苦労が分かち合われているので、お互いを傷つけないように配慮するところに特徴があります。友達とか仲間ってそんな感じですね。

一方「ナイショ」とは、もう一歩深入りしたつながりのことを指します。代表的なのは家族や恋人ですが、それは1対1で結ばれるきわめて深い関係です。そこでは相手に対して「ちゃんとわかってほしい」という強い感情があるゆえに、激しくぶつかったり、傷つけあったりが起こります。

撮影:FRaU編集部
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さてこのナイショとシェアですが、今の時代、シェアのつながりに関しては多くの人が得ようとして様々な工夫をしていると思います。SNSはそのようなつながりを作るのには役に立ちますね。安全なシェアのつながりは今大いに評判がいい。とはいえ、飲み会などがなくなって、リアルでシェアのつながりをもつことにも制限がかかりましたね。

これに対して、ナイショのつながりを新しく作ることは難しくなりましたし、そのように関係を深めることに多くの人が恐れを抱くようになっていると思います。他者と深くつながるために、本音をぶつけたり、ぶつけられたりが必要で、そこにはリスクがありますから。

その一方でステイホームが勧められ、家族や恋人といった、特別なナイショのつながりの人とだけ過ごす時間は増えていきました。そういったつながりがない人は孤独になりましたし、リアルでシェアのつながりを持てない分、家庭内やパートナーとの関係に求めるものが多くなりました。その結果、暴力が起きることもあります。

――確かにナイショのつながりには危険な印象があります。

東畑 家族や恋人との密な関係というのは、毒親を生んだりDVを引き起こしたりと、リスクがあるんですね。ですから、一人に依存するのは危険で、依存を分散したほうが安全だというのが最近の流れでした。その意味で、シェアのつながりは安全でいいんですね。みんなでつながるときには危険が少ない。