他人を「敵か味方か」で考えやすい社会に

――一方で、他人に頼ったら逆にキツイことを言われたりして傷つきそう、という不安もあります。

東畑 確かに世の中にはひどいことをしてくる人もいます。それは事実です。ですから、そういうときに自分を守る術を身につけておくことは大事です。ただし、あまりに鉄壁の守りになってしまうのも問題です。実際には、世の中はヤバい人たちばかりではなく、いい人もいますからね。ですから、防御壁は鉄壁よりも、何段階かになっている方がいい。外堀と内堀の両方があった方がいいんですね。ちょっとずつ自分の内部に他人を招き入れて、ちょっとずつ信じていくことが大事。外堀は通すけど、内堀で帰ってもらうとか(笑)。

撮影:FRaU編集部
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――だけどだんだんと、ほんの少しだったとしても自分の内部に招き入れようとしなくなったということですよね。なぜ私たちは、そんなに鉄壁の守りを築くようになってしまったんでしょう?

東畑 他者が怖いからですよね。それに尽きると思う。僕らはどんどん他者を恐ろしく感じるようになっていると思います。その現れとして、「敵か味方か」というシビアな線を引くようになったことが挙げられます。敵は怖いですよ、やっぱり。でも、実際は多くの人がグレーゾーンですよね。ふわっとした関係がたくさんあるはずです。でも今は、先ほど「中身がないことで時間を作ってほしいとは言いづらい」とおっしゃっていたように、そういうフワッとしたつながりが難しくなっていますね。茶飲み話にもアジェンダが必要な時代です(笑)。

――それでSNS上のコミュニティにつながりを求めると、すぐ叩かれたり炎上したりするので怖いし……。

東畑 SNSのつながりというのはいいところもあるのですが、文字でのつながりですからどうしても白黒ハッキリせざるを得なくなります。言葉ってそういうものですね。やっぱり身体があると違いますよ。考え方が違っても、「なんか疲れてるな」とか「結構楽しいやつだな」とか思いますからね。

――とはいえ、じゃあフワっとしたコミュニティを持ちましょうと言っても、社会構造が変わってきているので難しいですよね。白黒つけるつながりばかりにならない対策としては、どのようなものがあるでしょうか?

東畑 難しいですが、たとえば、スマホを持っていなかった子供の頃って、なぜかいつも友達と一緒にトイレに行ってませんでしたか? あとは、帰り道をダラダラ一緒に歩いたり。そういう時間って、雑談の余地を作るんです。そうですね、今ならたとえばZOOM会議の後、最後まで退出せず残ってみるとか(笑)。そういう“よく分からない時間”に、なにかプライベートな話がなされるんですね。これぞ「聞いてもらう技術」です。

――それ、いいですね! わざわざお茶や飲みに誘うとなると、断られたら嫌だなあと思ってしまいますし。

東畑 たしかに断られるのは怖いし、「勇気を持って誘って」というのはあまりにもハードルが高いですよね。ならば、“誘われる”状況を作ってしまいましょう。駅に着いて「じゃあ」というときにムダに立ち止まって立ち去らないとか、いろんなタイミングでムダにたたずむんです(笑)。そうすると何となく、「じゃあご飯でも行く?」「お茶でもする?」という流れになる、かもしれない。

――なるほど。たしかに相手がダラダラしていると、「意外と暇なのかな?」と思って誘いやすくなります。