「ただ聞いてもらう」の重要性

――悩みを抱えている人も、相談されるほうも、とにかく自分の中にとどめず外に出す、ということが大切なんですね。一方で、相談に乗った後も、「あんな返答で良かったんだろうか」「逆に傷つけたんじゃないだろうか」と悩んでしまう人も少なくないようです。

撮影:FRaU編集部
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東畑 それは本当にそうなんですよ。誰かを傷つけてしまったのではないかというのは、人間にとって最大の苦悩のひとつです。カウンセラーだって、仕事を始めた初期に、その葛藤に遭遇します。慎重になりすぎて、何も言えなくなってしまうんですね。でも、だんだんみんな現実的になっていきます。つまり、アドバイス一つで人生を取り返しがつかないほどに損なってしまうことってそれほどないわけです。傷つけてしまうことはもちろんあります。しかし、やり直せることもわかってくる。そうすると、少しずつ自然体でクライエントと会えるようになってきます。それは人間を信じられるようになる、ということです。

――私たちは自分が傷つきたくないあまり、自分も人を傷つけてしまうかも、という思いに捉われてしまっているんですね。でも実際には、そんな力はない(笑)。

東畑 そうですね。ただ、もしあまりに傷つけてしまったのではと気になるようでしたら、相手に尋ねてみればいいと思います。「こないだあんなことを言って、傷つけたかなと心配しているんだけど大丈夫?」などと。そうやって話し合いをすることそのものが、関係を確かなものにしていくことだと思うんです。

今は放っておくとつながりがどんどん失われていく時代になっています。ただ、同時にそのスピードはそれほど速くはない。つながりというのは、ゆっくりと変化していくものだと思うんです。ですから、そうやって時々ぶつかりあうことには、関係を再生させる力があると思うんですね。相手についていろいろと考えているのであれば、どんどん言葉にして伝えたほうがいいと思いますよ。