「曖昧なもの」から得られるものがある

――なるほど……。ぶつかることにこそ意味があるのに、最近はちょっと嫌なことを言われたら「もう切ろう」とか、人間関係もゼロか百かになりがちな気がします……。

東畑 自己コントロール過剰時代だからこそ、曖昧な状態に弱くなっているというのはありますよね。余談ですが、僕はカウンセリングがある日の前は、とにかくしっかり寝ることを心がけているんですね。睡眠こそが、最強の健康法です。そこで眠りの質を知るために、寝返りなどから睡眠の質を記録するスマートウォッチを買ってみたんですが、これが微妙で。自分では「あ~、よく寝た」と思っても、記録を見たら実はそんなに眠りが深くなかったりする。そうすると何だか疲れが取れていないような気がしてしまって、「あれ、これって何だかおかしいな」と思ったわけです(笑)。

撮影:FRaU編集部
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――それほど今の時代は、コントロールすることに流されやすいということですね!

東畑 もちろんコントロールしてもいいですし、自分をコントロールすることは大事です。ただ問題なのは、コントロールばかりしていることで、気持ちよく眠ったはずなのに、全然眠れなかった気になってしまうことです。ドラえもんののび太くんがすぐに寝れるのは、彼がコントロールしようとしない人だからですね。眠りって本来曖昧なものだと思うのですが、コントロールしようとすると失われてしまうんですね。

曖昧さとは、つまり同時に正反対のものがあるということです。白と黒の両方があるのが、グレーゾーンなのと同じです。日本の臨床心理学を築いた河合隼雄は、正反対のものを両方自分の人生に取り入れることを常に主張していました。それこそが心理学だ、と。これは要するに、分かりやすく言えば「モヤモヤしようよ」ということですね。心理学とは、モヤモヤ推しの学問でもあるんです。

――モヤモヤ推しですか! そう言われると、今の私たちに必要なものが何なのか、すごくストンと分かったような気がします。