正常なモヤモヤの見極めラインって?

東畑 本を読むことにもそういう意味があるように思います。本って安全にモヤモヤさせてくれるメディアだと思います。ネット記事とは違ってエンディングにたどり着くまでが長いですよね。そこまではずっと答えはない、モヤモヤしっ放しです。だけど、その過程こそが、僕らの心を豊かにしてくれる。モヤモヤにはそういう良いところがある。

もちろんスッキリしたほうがいいこともあります。ただ、やはりいつもスッキリしてなきゃいけないというのは極端でしょう。人間はそもそも、悩みがあるのが正常な状態ですから。

撮影:FRaU編集部
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――1つでも悩みがあると、それはもう解決すべき状態だ、と知らず知らず思っていたかもしれません。でもモヤモヤしていても正常なんですね。ただ、そのモヤモヤにも程度はあると思います。正常なモヤモヤの見極めラインってありますか?

東畑 僕は、ちゃんと寝て、ちゃんとご飯を食べれて、少人数でいいから友達がいることが、心にとって必要なことだと思うんです。ですから、そういう状態のときは少しモヤモヤしてみたらどうかと思うんです。もしそうじゃなければ、周りにモヤモヤを話してみたらいいと思います。スッキリする知恵をくれるかもしれないし、そうじゃなくても一時期モヤモヤを預かってくれるかもしれない。それで元気が出てきたら、もう一度モヤモヤに取り組んでみたらいいと思うんです。

あらゆることは程度問題です。そして、程度こそが最も判断が難しいことです。一人で考えていると基本極端なことを思うようになりますから、誰かと一緒に程度を見極めるといいのではないかなと思います。

――だからこそ、SNS上だけでなくリアルでのつながりを持つ努力が必要なのですね。とりあえず、今日からZOOMを最後まで退出しなかったり、誰かといるときムダにたたずんだりしてみようと思いました。貴重なお話を、本当にありがとうございました。

『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』著者:東畑開人/新潮社

『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』
東畑開人著 新潮社 ¥1760
カウンセリングに行くほどではないけれど、何だか生き辛い。だから自分の心と向き合って悩みをクリアにしたい。でもその術が分からない……。そんな人のために、本を通じて著者があなたの心を整理し、これまでとは違ったように自分と世界を見れるよう手助けしてくれる一冊。

東畑開人
1983年生まれ。臨床心理士。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了後、精神科クリニック勤務、十文字学園女子大学准教授を経て、白銀高輪カウンセリングルーム主宰。『野の医者は笑う―心の治療とは何か?』、『心はどこへ消えた?』など著書多数。『居るのはつらいよ―ケアとセラピーについての覚書』は第19回大佛次郎論壇賞、紀伊國屋じんぶん大賞2020を受賞している。