ロシア国民を混乱させる経済制裁、それでもまだ戦争反対の声は小さい

モスクワから見たウクライナ危機・後編
村上 大空 プロフィール

戦争反対の声はあるにはあるが

もちろん、今回のウクライナへの軍事侵攻に対して、ロシア国内でも反対の声が強まっている。週末になると、モスクワだけでなく、各都市の中心で戦争反対を訴えるデモが行われており、回数を重ねる度に逮捕者や拘束者の数も増えている。

このようなデモは、初めて起こったわけではない。例えば、昨年、ロシアの反政権活動家であるアレクセイ・ナワリヌイとその陣営が中心になって反政府デモを呼び掛けてきた。この時もロシア各地では大規模なデモが開催され、当時も当局からデモの会場や最寄駅の封鎖など、様々な規制があったが、今回のデモに対する規制は比べものにならない。

モスクワ市内でのデモ参加者、拘束 撮影・筆者

今回のデモに対して、ロシア当局は会場になりやすい中心の公園や広場を封鎖し、デモが発生しやすいエリアにはあらかじめ大量の治安維持部隊を配備するなどの対策を取っている。

昨年と比較しても、少なくともモスクワでは動員されている車両の数が増えており、通常はデモがある日や重要施設の前でしか目にすることができなかった治安維持部隊の車両は、平日の昼間であっても目にすることができるようになっており、警戒態勢の違いが伝わってくる。

そしてデモに対しては、日を追うごとに、ロシア当局からの締め付けが強くなっており、「No War」はもちろん、「2語」と書いたプラカードだけでなく、白い紙を持っているだけでも、治安維持部隊に両脇を抱えられ、バスに連れ込まれる映像が拡散されている。

ロシアの公式見解では、現在ウクライナで行われているのは「特別軍事作戦」であり、戦争という表現にはかなり神経質になっているのも関係しているだろう。

ただこうしたデモの映像は、テレビでは放映されておらず、拡散されているのはSNS上が中心である。

こうした締め付けの強化により、国民側の萎縮も目立つようになっている。例えば、ロシア外務省附属のモスクワ国際関係大学では、卒業生が中心となり、ウクライナでの軍事行動に対する抗議する公開書簡が用意され、署名が呼びかけられていた。しかし、当局からの締め付けが強くなってからは、賛同者の安全のため、署名者リストは非公開になり、公開書簡のみが残されるようになった。

 

また高等経済学院やサンクトペテルブルグ大学の学生に対しては、「反特別軍事作戦デモ」により捕まった学生は、たとえどのような理由があったとしても退学になるという通達があった、という報道もあった。

戦争に反対しているロシア人と話すと、「デモには行きたいが、家族もおり、声を上げたくても上げることができない」「ウクライナには友達が多くても、彼らには今後顔向けできなってしまった」という悲観的な声しか出てこない。

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