メリットばかりではない「チョンセ」の現状

一見、チョンセはものすごくお得で良い仕組みのように思えますが、もちろんデメリットもあります。まずは入居時に必要なお金が高額すぎること。普通の会社員が2000万近い大金をポンと出せるわけがないので、多くの場合は、親に借りるか借金をすることになります。

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また、チョンセは人気があるからと大家さんが強気になって、「月々別途で3万円払ってください」などと言い出す事例や、退去する際に大家さんがお金を返してくれないという問題も発生しています。先ほどお話したように、大家さんは契約時に受け取ったお金を投資に回しています。急に「転勤で引っ越すことになったので返金してください」と言われても、返金すべき契約時のお金をすぐに用意できないこともあるわけです。

時には大家さん自身の投資が上手く行かず「3カ月待って」「1年待って」とズルズル引き延ばされるケースもあり、最悪の場合、預けたお金を使ってしまって資産がないという人も。そうなると部屋は差し押さえられ、大家さんは逮捕されます。

昔はそういった事例が結構あって物件が競売にかけられることも多かった。その場合、希望すれば住んでいた人が最優先で安く買えるという決まりがあります。たとえば市場に売りに出したら1500万円する物件が、500万円で買えることもあるわけです。

今は入居者を保護する法律もできて、大家さんに裏切られても最低500万円は戻るようになっています。でも、その金額では次のチョンセは借りることができないし、マンション購入の頭金にもならない。やはりリスクは大きいと思います。

パク・ボゴム主演のドラマ『青春の記録』では、賃貸詐欺に合うお兄さんが出てくる。出典/『青春の記録』公式サイト(tvN)

なぜこんなに変わった「チョンセ」という賃貸システムが韓国で生まれたかと言うと、理由は戦争です。韓国は戦争が多い国で、情勢が不安定な時期が長かった。有事の際に家を捨てて逃げる人も多く、大家さんは家賃を踏み倒されることもありました。つまり、何が起こるかわからないから、先に家賃をもらっておくという思考が生まれたわけです。でも今の時代には、正直合わないシステムだと私は思っています。韓国で賃貸住宅に住もうと思ったら、普通はチョンセではなく「ウォルセ」を選択する人が多いと思います。