外国人に着物を着せたい!

着物について、私にはもうひとつの願望があった。それは、「外国で着せたい!」。海外を旅する機会がぼちぼちある自分は、せっかく日本人が持ち合わせた「エキゾチック・ジャパーン!」なアイテム、その代表格である着物を使わにゃ勿体ないとかねがね思い続けていた。

海外に出て、おのずと自分が「日本代表」「マイノリティ(少数派)」的な存在になったとき、たとえば折り紙や日本食が現地人とのコミュニケーションの潤滑油になったという人は多いだろう。なにもアイデンティティを誇示するためでなく、その滞在をより良きものにするために笑顔を生むツールとして、着物に期待を抱いていたのである。それゆえ、旅先で着る・着せるという大胆なチャレンジに、初心者の頃から取り組んできたのだった(むしろ初心者ゆえの無鉄砲さがあればこそ行動に移せたとも言える)。

まずは、海外の友人らを訪ねるさいの、サプライズ企画として。やがて「どうせ持ってるなら」と、乗り物や宿で知り合う人々に着物を見せるようになった。するとたいてい、相手のほうから「着たい!」と喰いついてくれるのだ。

三週間の欧州旅行で、当時小6の娘(左端)を助手に着せた数 18 人。写真提供:森優子

大名旅行と縁のない自分の場合、持参にはさまざまな工夫も不可欠だ。飛行機のエコノミークラスで無料で預けられる重さにおさめるために、アイテムをとことん省略。帯もあらかじめ結んだ形に縫いとめた「作り帯」を使う。いわゆる「なんちゃって着付け」ではあるが、着物と帯は伝統的な正絹のものにこだわり、これまで旅先で着せた数は 25 名以上になった。

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こうした経験から、私はふたつの確信を得るに至った。おそらく着物は世界一有名と言っても過言ではない民族衣装であること。そして、文化や言葉の違いをぶっ飛ばして、キャーキャー大うけ状態を生み出せる鉄板アイテムということだ。
「KIMONO、ずっと憧れてたの きゃー」
「早くおばあちゃんにも写真を送らなくちゃ!」
何度そんな歓喜の声を聞いたことだろう。正式な着付けではなかったかもしれない。でも、あなたの夢は、叶えられたんだよね。

エコノミークラスで無料で預けられる重量内におさめるため、軽量化の工夫をいろいろ。作画:森優子