どうして部下や妻の気持ちは察しようとしないのか

最後にドラマの2話、原作2巻からご紹介しよう。バスジャック事件の中で描かれた、乗客たちのエピソードはどれも心に残る。いじめについての本質、職業蔑視、不妊治療……その中から、部下に自殺されたことがあり、定年退職したとたんに妻と子供たちが家を出て行ったという奈良崎幸仁の例をご紹介しよう。奈良崎は吐き捨てるようにこう吐露する。

バスジャック事件で乗客たちの素顔がどんどん明らかになる… (c)田村由美/小学館 (c)フジテレビジョン

「部下に自殺されたことがある。わたしのせいか? 仕事が忙しいのはみんなだろ。
定年退職してさあこれからと思ったら、妻と子供たちは出て行った。わたしのせいか?
よく言うだろう。男ははっきり言われないとわからない。察してくれとか言われてもムリな話、理詰めできっちり話してくれないと対処できん。人の気持ちなぞわかるか!」

こう語る奈良崎に、整は言う。

僕はまだ社会にでていないのでわかりませんが、そういう能力って仕事には必要ないんですか? 人の気持ちを察しないとか、言われないとわからないとか、仕事はそれでできるんですか

(c)田村由美/小学館『ミステリと言う勿れ』2巻より

「仕事は別だ。顧客のニーズを拾い、先を読んで備える。真心で奉仕の保険会社だ。上司の機嫌もちゃんととる。そうやって出世した」奈良崎は当然のように言う。そんな奈良崎に整はまっすぐに語るのだ。

……じゃあ そのスキルはあるんじゃないですか。どうして部下の人や身内にだけ発揮しないんですか。できるのに

(c)田村由美/小学館『ミステリと言う勿れ』2巻より