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ワクチン接種とともに社会的・個人的対策が伴わないと……
日本における第5波の急激な感染収束を見れば、ワクチン接種の有効性は明らかですが、ワクチン反対派の人たちは、感染が収束したのは、国民のほぼ全員がデルタに感染して獲得免疫ができたとかウイルスが自壊したかのような説明をされる方が多いようです。しかし、前に述べたように、これを裏付けるような科学的エビデンスはいっさいありません。
一方で、ワクチン反対派は、イスラエル、イギリス、アメリカ、韓国などの例を挙げて、ワクチン接種率が上昇しながら感染者が再び急増しているので、ワクチンが効いていないと言います。
しかし、疫学的データからは、ワクチンはデルタに対しても明らかによく効いていて、オミクロンが流行してからは感染予防の有効率はかなり下がっているものの、重症化を抑える有効率は相変わらず80~90%ぐらいあります。
韓国の例
では、ワクチン接種が進みながら、なぜ感染が制御できていない国があるのでしょうか。第2章ではイスラエルの例を挙げましたが、ここでは韓国の例を見てみましょう。
韓国では、日本と同様に強力な感染抑制策をとってきましたが、ワクチン接種が順調に進み、感染が収束傾向にあったため、2021年11月より、コロナとの共存を目指す政策を開始して、大幅に規制を緩和しました。ソウルなど首都圏では、それまで午後10時までとしていた飲食店などの店内営業時間の制限が撤廃され、家族や友人の集まりは、人数制限が8人から最大10人に緩和されました。感染リスクが高いとされ、いろいろな制限があったカラオケやナイトクラブなど遊興施設でも、ワクチンパスポート(接種証明書)を試験導入して規制を緩めました。
ところが、「コロナ共存策」を始めた途端に感染者が急増して、2021年12月中旬には新規感染者数は7000人台を突破し、過去最悪を記録、死者数も大幅に増えました。国民の7割以上がワクチンの2回接種を終えていたにもかかわらずです。そこで韓国政府はあわてて追加接種を始めました。辛うじてデルタの感染拡大を食い止めることができましたが、感染対策の「優等生」だった韓国であっても、少し手綱を緩めた途端にこのような状況になってしまうわけです。