うっかり恋に落ちるところだった?
車は、ぐんぐん山を登る。あたりは真っ暗。舗装されてない、崖のような車1台分くらいのスペースに車が止まった。そして、男が後部座席のドアを開ける。
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「あっ、これは本当に終わった…」と思い、おっちゃんの顔を見ると、宝物を見せてくれる少年のように笑って手招きしている。いいからこっちへ来いと言っているようだった。
震える手でリュックを握りしめながら外に出ると、そこには、九份らしき集落の光が眼下に広がっていた。ただ、おっちゃんはガイドブックに載っていない絶景スポットに連れて来てくれただけだったのだ。
裸眼だったのと、さっきまでの恐怖で感情は乱高下、「うわぁ綺麗」とは正直ならなかったが、なんとニクい演出。おっちゃんが、ゲップとおならを連発するタイプじゃなければ、うっかり恋に落ちるところだった。