ぼられたけど「良かったこと」として心に残る

おかげですっかりおっちゃんを信用した私は、次の日もその次の日も、おっちゃんと一緒に行動した。それは、めちゃくちゃ当たると評判の占い師に「あの運転手はやめたほうがいい」とアドバイスされるまで続いた。車内で繰り広げられるゲップとおならに辟易していたところだったので、ちょうど良かったかもしれない。

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かなり自暴自棄になっていた一人旅であったので、危険なことをしてしまったが、決して真似しないで欲しい。大事なことなので、もう一度言う。言われるがままの料金を支払い、サービスにキャッキャして自衛のガードを緩めてはいけない

ちなみに、私が支払った金額は相場より少し割高で、望んでないお土産屋さんにも連れて行かれたりした。だから、あのおっちゃんにもう会うことはない。それでも、やっぱりあの夜景のサプライズは、私の中で「良かったこと」として心に残っているのだ

ぼられたり、危険を顧みないのはダメだけど、やはり、気の向くまま、流れに流されてみるというのもいいなぁと、この台湾のことを思い出した。それは冒頭のタクシー事件があったからだ。

特にこのコロナ禍で、ゆらゆらとさすらうことの大切さが身に染みる。努力や緻密な計画、試行錯誤に行き詰まったら、無意識に身を預けて、一歩を軽はずみに出してみる。何も考えずに踏み出せちゃったものこそが、本当に求めているものなのかもしれない

元来、なんでも足を踏み入れてしまいがちな私だが、やり切った先の無の瞬間に大事な決断をすることが多かった。不思議とそんなふうに大事な決断をしたときのことは、匂い、感覚、景色をよく覚えている。まっさらに現実世界を享受していたからだろう。

写真提供/バービー