憧れの監督への挨拶から拓けた道

そのTwitter上の漫画は、のちに『セキララマンガ 眠れぬ夜に届け』 (フィールコミックス) として出版もされる。学生時代にSNSに投稿した作品が評価されて書籍の出版に繋がるというのはいかにも順風満帆のように思えるが、当時の彼女は内心葛藤をしていたという。

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「Twitterでイラストや漫画を投稿していたのは、多摩美術大学でグラフィックデザインを勉強していたときです。多摩美は課題が多いことで有名な学校なので、日々課題に追われている日々でした。ただ、そこで制作をしていた、広告物があまり自分の求めているものづくりの形ではないと感じていた。性に合っていないな、と。そういったフラストレーションが、結果的に漫画やイラストを描くモチベーションに繋がっていたんです」

藍にいなは、多摩美術大学で2年間在学したのち、東京藝術大学に入学する。そこで彼女にとっての大きな出会いがあった。

「児玉裕一監督のことが昔から好きで尊敬していたのですが、ある日特別講師で授業をしてくださったことがあったんです。そこで私は、講義の後に授業で作った15秒程度の短いアニメーションを見せて、『何かしらお手伝いができることがあればさせてください』と伝えました。後日、児玉監督は本当に私に連絡をくださって、そこから椎名林檎さんのライブ演出などに携わるようになりました」

児玉監督への突撃挨拶は、彼女の世界を一気に広げた。その後、椎名林檎のライブ演出を見た、女性アイドルグループMaison book girlのスタッフから藍にいなに連絡が入る。

「『闇色の朝』という新曲のMVを作ってくれないか、という相談でした。全て一人で作って欲しい、という自由度の高い依頼で、どこまでやっていいのか手探り状態で不安だったのを覚えています。ただ、いただいた楽曲からキャラクターデザインや絵コンテなどを制作してプロデューサーにお渡ししたところ、『もっとやっちゃっていいよ』と言われたんです。そこで、気持ちが楽になって、いつも通りの自分の世界観を追求することができ、最終的にMVの途中に空白を入れたり、キャラクターの顔に穴が空いていたりなど、攻めた表現につながりました。初めてお受けしたMVの仕事で、ここまで自由にやらせていただけたことが、その後の私の活動にとってもとても大きなことでした

出典/youtube Maison book girl / 闇色の朝 / MV