「相手の立場に立って考える」能力の高さ

2つ目は「共感力」相手の立場に立って考える力のこと。新庄さんはこの能力がものすごく高いと思いますね。本にもこんなエピソードが紹介されています。

僕には人に気をつかいすぎるところがある。大勢で食事をしていると、ポツンとしている人が出てくることがある。すると、その人に向けて話しかけなきゃと思う。それを何度も繰り返していって、最後にはグッタリと疲れてしまう。(『スリルライフ』より)

相手がうれしいときに、ともに喜ぶ。悲しいとき、苦しいときに、その感情を分かち合う。そんなふうに相手の気持ちに寄り添うことは、表面的な共感に過ぎません。一歩踏み込んで、相手の気持ちに深い関心をもち、それを代弁する力。それが本当の意味での「共感力」です。

医師の仕事もそうですが、どんな分野であれ、プロの仕事はすべて「共感力」が求められます。野球にしても、アマチュアなら自分が楽しければOK、それで十分です。でもプロになると、自分のプレーで観客が、あるいはチームのみんなが“どう感じるか”が問われます。

その人の立場になり、気持ちも考えて代弁する。どんな職業にも必要なことだ Photo by iStock
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新庄さんにはそういう本当の共感力――ファンの気持ちを代弁する力がありますよね。自己中心的のように見えて、実は周囲にどう思われるか、何を期待されているのかをすごく気にしています。そして周囲が望んでいることを代弁するかのように行動するのです。

では、子どもにどう接すれば、新庄さんのように共感力のある人間に育てられるのか。それは簡単。生物が本能的に持っていること、つまり子どもへの共感を大事にし、「子どもの代弁者」であればいいのです。親であれば誰もが「子ども心を読み取る力」を持っています。親であれば、子どもの心を代弁することは少しも難しいことではありません。

監督であれば、ファンの、そして選手たちの代弁者になる必要がある。つまり、共感力こそが監督力です。もっとも新庄さんの「共感力」は、過剰かもしれませんね。プロを引退した後、バリ島でひとり暮らしを始めたのは、“共感疲れ”が祟ったようにも感じます(笑)。