1ドル=125円超え…日本人の生活を直撃する「円安」がここまできた「4つの理由」

加谷 珪一 プロフィール

(4)日本の株式市場からの資金逃避

かつて日本の株式市場は世界の主要市場のひとつと見なされており、各国から投資資金が集まっていた。優良な企業が多ければ、長期的な資産形成を目的にした資金が集まってくるので、基本的に資金の流入超過が続く。つまり継続的にドルを売って円を買う流れが続くということであり、円を買い支える要因となっていた。

だが日本企業の業績低迷が著しく、海外投資家は日本株に見向きもしなくなっている。過去20年で諸外国の企業は業績を大幅に拡大させたが、日本企業の売上高は横ばいに近い状況が続いている。日本の上場企業(東証1部と2部)の1社あたりの時価総額はニューヨーク証券取引所の5分の1程度の水準しかなく、国内で大手企業といってもグローバルで見れば中堅企業に過ぎないところがほとんどである。

加えて日本企業はガバナンスの不備が目立ち、透明性が極めて低い。主要国の市場でここまで不正会計が放置されているのは日本くらいなものである。グローバルに資金を運用する投資ファンドにとっては、日本企業の多くはもはや投資不適格であり、投資対象から外す動きがここ数年、顕著となっている。

当然のことながら、こうした市場は、短期的な利鞘を稼ぐ荒っぽい投資家ばかりとなり、短期資金は利益を確定するとすぐに本国に戻ってしまうので、円買い要因にはならない。

 

円安は長期化の可能性も

上記のように円安が進みやすくなっている要因について列挙したが、いずれも短期的なものではなく、長期的かつ構造的なものであることが分かる。

日米金利差の拡大は、量的緩和策が効果を発揮した米国と、ほとんど効果を発揮しなかった日本との違いに起因するものであり、経済構造そのものの違いである。また政府債務の水準も日本と米国とでは大きな差があり、金利上昇に対する経済の耐性がまったく異なっている。この違いを縮小するのは、日本経済の仕組みそのものを変革する必要があり、一朝一夕にできることではない。

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