モンゴル語&立体文字でお出迎え

「サムライや着物に憧れ続けてやっと来日できた全盲のモンゴル人留学生がいるのです。なんとか着物を着せてあげたいと願っていたところで、鈴木さんの投稿を見ました。着物のことがわかる人につながれば実現できるのではと」(ニャマフーさんのメールの文面)

その留学生というのが、先述の青年、ダグワさんである。モンゴルからつくば市の大学に留学して、一年半だという。鈴木さんを介して相談を受けた私が、「おっしゃあ」と立ち上がったのは言うまでもない。かくして、彼の憧れを実現させる計画が始動したのである。

いよいよ当日を迎えて対面だ。
「はじめまして、ダグワと申します」
ずっとディスプレイの文字だけで会話していたので、声を聞くのも互いに初。ダグワさんは身長 178センチ、すらっとしていて、ずばりかっこいい。

そして、思った以上に喜ばれたのが、前夜に作っておいたモンゴル語での歓迎ボードだった。作り始めてから「あ、これじゃダグワさんが読めないじゃん」と、急遽エチレンボードで文字を立体にしたものだ。これを、ダグワさん以外の二人もたいそう喜び感謝してくれたのだった。鈴木さん曰く、「出来が良い悪いじゃなくてさ。これを作ってくれたっていうこと自体に『歓迎』の心を感じるんだよ」。

左から/鍼灸師のニャマフーさんと、筑波技術大学の留学生ダグワさんは、在日モンゴル人つながり。ニャマフーさんと、鈴木弘美さん(左から3番目)は、国際視覚障害者援護協会のボランティア活動を通じて知り合った、視覚障がい者つながり。鈴木さんと筆者の森(右端)は、旅行好きつながり。この4人が着物によってつながった。写真提供:森優子
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なお、鈴木さんとニャマフーさんは視力が弱視(見ることはできるが視力が低い)、ダグワさんは全盲と、3人には視覚障がい者という共通項がある。

弱視の視覚障がい者・鈴木さんは地球を 5周半以上も周った旅行好き。左目 0、右目 0.06の弱視でばんばん一人旅ができるようになったのは、タブレットの普及のおかげとのこと。情報収集、文字や地図の拡大、あらゆる予約管理など、自力かつ手元でさくさくできることが格段に増えたという。作画:森優子

ちなみに、ニャマフーさんも着物は未経験だった。「着たい気持ちはありましたが、周りに着物を着る人がいなかったのです。道で着物姿の人に声をかけて頼むわけにもいきませんし」(ニャマフーさん)。

鈴木さんに仲介を頼んだのは、同じ視覚障がい者で互いの事情がわかるからというわけでは特になかったらしい。「彼女ならきっと力を貸してくれるという人柄と、SNSの着物姿がかっこよかったからですよ」とニャフーさんは言う。

◇「着物が着たい」と、片道 2 時間の電車を乗り継いでやってきた盲目の留学生ダグワさんは、なぜそんなにも着物に恋焦がれるのか。そして、長年の夢かなう時、その姿をダグワさんはどうやって確認するのだろう。後編「『あなたは今サムライだ!』全盲モンゴル人留学生の18年越しの夢を叶えた着物の力」で詳しくお伝えしたい。