2022.05.05

年収100万円未満という人も…“あまりに割にあわない”「ピアノ講師」という職の実態

秋山 謙一郎 プロフィール

ピアノ講師になるための膨大なコスト

このA、B、Cの三人のピアノ講師たちは、いずれも小学校入学前からピアノレッスンを受け、著名な私立の音楽大学を卒業した音楽エリートたちだ。

ライセンスが存在しない世界だが、代わりに芸、音大卒という学歴がこれに取って代わっている側面がある。

いくら学歴不問、ライセンス不要の世界とはいえ、その王道コースは芸、音大出身者である。なのでピアノ講師としてスタートラインに立つには、まず芸、音大への入学だ。

その芸、音大への入学、合格から卒業までにかかるコストは実に高い。多少の異論反論はご寛容願うとしてピアノ界の“東大”といわれる東京藝術大学、“京大”にあたる京都市立芸術大学といった国公立大学の場合、その学費は入学金、授業料などを合計した初年度納入金で120万6020円である(出所:東京藝術大学HP)。

学費が低廉との印象が強い国立大学だが、東京藝大の初年度納入金合計は東京大学のそれ81万7800円に比して、約40万円高額だ。私立だと、著名な演奏家を数多く輩出した桐朋学園大学を例に取ると、初年度に必要な納入金合計額は270万6600円である。学部4年間で必要な金額は842万6400円だ(出所:桐朋学園大学HP)。

『ピアノの森』より ©一色まこと/講談社
 

もちろん学費だけでは済まない。入学以前のピアノ講師レッスン料(芸、音大対策)は毎月1万円から2万円というところもあれば、1回ごとの都度払いで5000円から2万円というところもある。月謝こそ1万円だが、コンクール、補講、音楽関係者の紹介を受けるにあたっての“ご挨拶”、合格後の謝礼……などなど、その都度2万円、3万円、5万円と費用が嵩むこともしばしばだ。

レッスン料、各種謝礼の合計額を月額10万円と仮定、これを小学校4年からずっと続けたならば高校卒業時までにかかる費用は1080万円だ。

ピアノ講師を目指すならばグランドピアノも必要だ。取材した限りでは、プロの演奏家、ピアノ講師となるならば、「かなり低めに見積もって150万円くらいのそれは欲しい」(東京都内で活動するピアノ講師)という。

芸、音大入学後も、夏休みなど長期の休み時には、個別レッスンを受けたり、短期留学をすることもある。その費用は、先でも触れたように個別レッスン「都度払いで5000円から5万円」など、個々人によって違いはあるがそれ相応の額となる。海外への短期留学なら100万円程度の金額では、やや心もとないといったところか。

そうすると小学生から芸、音大卒業までにかかるコストの総計は、ざっと3000万円は必要といったところか。

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