2022.05.05

年収100万円未満という人も…“あまりに割にあわない”「ピアノ講師」という職の実態

秋山 謙一郎 プロフィール

あまりに割にあわない…

2020年の厚生労働省による「賃金構造基本統計調査」によると、ピアノ講師の年収は376.8万円だ。ここから経費などを差し引いた所得は、この金額よりも、当然、低くなる。

あくまでも取材の限りだが、音大を卒業した1年目、ピアノ講師としての収入は100万円に満たなかったという人も何人かいた。加えて演奏家としての収入は、かけた時間と回収した金額をみれば、むしろマイナス、赤字だという声も聞こえた。

芸、音大卒業までにかけたコストとその後回収できる金額、その差はあまりにも大きい。この差の大きさが日本にピアノ、ひいては音楽文化が育たない元凶だという人もいる。

ここで再び弁護士の世界に目をやると、欧米型の訴訟社会ではない日本では、弁護士のニーズは低く、その恩恵を受ける市民は極めてすくないといわれていた。だが年々、弁護士の数が増え、かつての公的な職業という様相を残しつつもサービス業の要素を帯びてくるにしたがって「儲けている弁護士」と「儲けていない弁護士」の格差が拡がった。

ある弁護士は言う。

「弁護士が儲けるには、自分が誰かを使う、経営者としてのセンスが必要だ」

これに倣うと、今後、ピアノ講師の収入を増やすには、先に紹介したピアノ講師、B先生、C先生のように“経営者”としてのセンスが求められよう。

弁護士の世界では、職人肌でひとり活動をしている弁護士は収入面で苦労している人もいる。ピアノ講師もまた先に触れたA先生のように芸術家肌の先生は、今後、さらに厳しい時代になることは誰しも察しのつくところだ。

だがネット時代である。芸術家肌、そのなかでも職人気質でコミュニケーション上手ではないピアノ講師ほど、オンラインで広く大勢にレッスンではなく、講義形式でみずからのノウハウを伝えれば、それはそれできっとニーズがあるはずだ。しかし職人気質の弁護士、ピアノ講師はこうしたことを嫌う……。

『ピアノの森』より ©一色まこと/講談社
 

いずれにせよ、法律家、音楽家、かつてなら求められることのなかったビジネスセンスが求められる時代となった。その時代の波に乗れなければ淘汰されてしまう、なんとも厳しい時代の流れを感じつつ、今回の取材を終えた。

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