何が一体「世界一」なのか?
世界でぶっちぎりナンバー1のスーパーコンピュータ「富岳」。2012年から米国や中国に世界一の座を奪われていた日本のスーパーコンピュータが世界一の座を奪還したと報じられたのは、2020年のこと。ただその存在、名前は知っていても、実力については、いまいちピンとこない、というのが一般の人たちの正直な感想かもしれない。

ニュースで報道される、「新型コロナウイルスの飛沫拡散実験」や「自然災害の大規模数値シミュレーション」「ゲリラ豪雨予測」などで「富岳」の名前を見かけるが、実は「富岳」の仕事はそればかりではない。世界で初めて太陽の自転の謎を解き明かしたり、がんの遺伝子ネットワーク分析の超高速化に成功したり、身近なところでは先日閉幕した北京冬季五輪のジャンプ競技の金メダル獲得にも、「富岳」は一役買っている。
このところ、日本の基幹産業と言っていい自動車産業やIT関連の産業が諸外国に押され、日本の地位が危うくなっているが、この世界一のスパコン「富岳」に関しては、ダントツのスペックと機能で、諸外国の学者や技術者らが心底うらやむ存在なのだという。そんな素晴らしい「富岳」を日本人が知らないなんてもったいないかも、とIT音痴なライターが自らの疑問+小中学生に募った質問・素朴な疑問を携え、無謀にも「富岳」の総責任者である理化学研究所 計算科学研究センター長の松岡聡さんにストレートに質問。
何が一体世界一なのか? どんなことができるのか? 知ったら思わず誰かに伝えたくなるスーパーコンピュータ「富岳」の全貌に前後編で迫ってみたい。