心に「ぽっかり」穴が開くという言葉

岸井 私が、喪失と聞いて最初に思い浮かぶのは祖父母ですね。でも、私の場合は、突然いなくなったわけじゃなくて、こちらも覚悟ができていたことだったので。ちゃんと病院に通って、頑張り抜いた結果で、家族は覚悟をする時間をたくさんもらえた。そこは、準備や覚悟が全然できなかった真奈とは全然違います。今の美波ちゃんの話もそうだし、真奈もそうだけど、たぶん、本当に心にぽっかり穴が空いたんだと思う。それにしても、誰が言い出したのかなぁ、“ぽっかり”って

浜辺 確かに。心に空白が生まれたときにピッタリの言葉だね。

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岸井 私の場合、祖父母を失ったのは突然じゃなかったけど、「ぽっかり穴が空く」気持ちは、すごく理解できます。実感として、「知ってる」って思う。ただ、親族が亡くなると、お葬式のときに親戚から祖父母のいろんなエピソードを聞いたりできるので、悲しいとか寂しい以上に、みんなで思い出や感情をシェアできることが、すごく面白くて切なくて不思議でした。本当に、「全く知らなかった!」みたいな昔話がポンポン飛び出して、私は「そんなの、本当か嘘かわからないじゃん!絶対に嘘だよ!」って驚きまくって、「長生きはするもんだ」と思いました(笑)。

葬儀のときは、もちろんみんな泣いてるんだけど、大往生すると、関係した人の数もどんどん増えていって、その亡くなった人の話で、新たな繋がりを感じることができたり。人間の知らなかった部分が知れたり。何か新しい生きるエネルギーを手渡されたみたいな時間でもありました。映画の中の真奈は、他人から聞くすみれの話を受け入れられないけれど、それとは対照的な時間。

撮影/山本倫子