親友の元恋人や母に対するわだかまり

浜辺 確かに、真奈はすみれの恋人だった遠野に対して、わだかまりがあるよね。親友なんだけれど、遠野しか知らないすみれがいて、でも、同じ「喪失感」を抱えている相手でもあって……。真奈は、二人の恋を応援している気持ちはあるけど、遠野と過ごす時間が増えると、自分と過ごす時間が減るとか。自分に見せるのとは違う顔を見せることに、ちょっと嫉妬を感じるのかなって。私はそういうタイプではないけれどすごく理解はできます。

一緒に暮らしていた部屋にあったすみれの遺品をめぐり遠野が真奈のもとへ…(C)2022 映画「やがて海へと届く」製作委員会
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岸井 うん。私も、真奈の気持ちはわからないでもない。それって、「私の方がすみれのことを知ってるのに」とか、すみれの母親に対しても、「なんで忘れようとしているんだろう?」と、それが許せない。喪失による哀しみの矢印が外に向いていて、人を否定してしまうんです。でもそれは、自分自身もすみれを徐々に忘れていっていることが許せないからなんですよね。私だったら、哀しみの矢印は外に向けずに、自分の内側に向けると思います。それで、どんなにしんどくても明るく振る舞ってしまうと思う。しんどい時ほど与えちゃうかも!

大学でであった真奈(岸井さん)とすみれ(浜辺さん)。そしてすみれは遠野(杉野さん)と付き合い始め…(c)2022 映画「やがて海へと届く」製作委員会

辛いときほど、それを隠したくて明るく振る舞っちゃうのが私なんですが、でも仕事は別です。現場が大好きなので、現場に入れば、辛いことを隠すまでもなく忘れられる(笑)。「やろうぜ!」っていう感じになる。もしかしたら、私には、大好きな仕事があるから、真奈みたいに誰かを許せなくなって人を攻撃しちゃうことがないのかも。ただ、辛いことはできるだけ悟られないように気を遣っちゃうところは、私の癖みたいなものですね。でも、基本はこんな、陽気な感じですよ。

撮影/山本倫子