ウクライナ難民が押し寄せる中で
ドイツが今、突然、非常事態の様相を帯びてきた。
3月のインフレ率が7.3%。目を疑う数字だ。ドイツ人の頭には1920年代のハイパーインフレのトラウマがこびりついているので、インフレを本能的と言っても良いほど嫌う。しかし、ウクライナ戦争が長引けば、これがハイパーインフレにつながる可能性はすでに否定できない。
一方で、ポーランドなどに入ったウクライナ難民が、雪崩を打ってドイツに入ってきており、すでに戦争はドイツ人にとって他人事ではない。それに関して、「ウクライナの人々は教育程度が高いので、速やかにドイツの労働市場に投入できる」といった肯定的な雰囲気を醸成する報道が増えている。
つまり、政府は難民として入れた人たちを、速やかに移民待遇に変えていくつもりらしい。ドイツの主要メディアが政府の太鼓持ちになっているのはいつものこと。

ウクライナ人は、これまでもドイツの介護などの分野に、特に女性が出稼ぎとして多く入っていたが、EUの加盟国ではないため、ウクライナ人全般が無制限にドイツに移住することは、もちろんできなかった。
それが現在、緑の党のベアボック外相が、ウクライナ人は全員、難民として無条件で受け入れると発表しており、一旦、ポーランドに入った人たちも、職があり、社会福祉の充実しているドイツに随時移動してきている。
ウクライナは経済が脆弱な上、政府の腐敗や貧富の差が激しいので、元々、ドイツに移住したい人は多い。つまり現在、戦争難民以外の人たちもどんどん入国していると見られる。
しかも、ドイツは、2015年に膨大な数の中東難民で国中が混乱した経験を生かすことなく、今回も緩い審査で受け入れているらしい。そのため、ここぞとばかり、ウクライナの偽造パスポートを持ったテロリストが入り込んでいるという噂まである。
移民、難民は、その人たちが教育を受けていれば、受け入れ側にとっては安くて良い労働力となる。しかし、彼らの祖国から見れば、優秀な人ほど外国に出てしまうわけで、なおさら国の疲弊が進む。すでにチェコやポーランドでも、国家が教育費をかけて医者や技術者を育てても、卒業したら皆、ドイツなど収入の多い国に出て行ってしまうという問題を長らく抱えている。
つまり、見方によっては、難民の受け入れは人道的というより、その反対である場合も多いと、私は思っている。しかも、世界で本当に困っている多くの人たちには、救済の手が差し伸べられていない。