妻は「お願いだから家に帰ってこないで!」と叫んだ コロナ「訪問診療」スタッフ 今だから明かせる壮絶700日の記録

医師たちの告白(前編)

患者の数は今もまったく減っていない

今年1月から実施されていた「まん防(まん延防止等重点措置)」が、3月21日をもってすべての都道府県で一斉解除された。その5日後、以前も数回取材したことのある、都内にある救急訪問診療の民間業者「ナイトドクター事務局」(本部・東京都港区赤坂)を2ヵ月ぶりに訪れてみると、今もピーク時と変わらぬ修羅場のような状況が続いていて、驚いた。

代表の菊地拓也氏(47歳)が疲れ切った表情で言う。

「コロナ感染が疑われる患者さんからの電話は今もまったく減っていません。日によってはむしろピーク時よりも多かったりします。今、恐れているのは、陽性者の数が下がり切らずに、このまま第7波に突入すること。実際、その可能性が高いと見ています」

すでにウイルス禍も3年目に突入。これまでの約2年間、菊地氏をはじめとする救急訪問診療会社のドクターやスタッフたちはどんな日々を送ってきたのか。訪問診療の現場で何を見て、どんな経験をしてきたのか。改めて振り返ってもらった。

ナイトドクター事務局ナイトドクター事務局

毎日千件以上の派遣要請電話

菊地氏が代表を務める「ナイトドクター事務局」は現在、電話応対などの事務スタッフと医師を運ぶドライバー、看護師など総勢20数名のスタッフで、365日24時間体制で運営されている。登録するドクターは約100名。1日10名ほどのドクターが稼働し、1都3県の患者宅を訪問し、診療にあたっている。コロナ以前は1日20〜30件程度の往診だったが、感染者の拡大によって150件前後に跳ね上がったという。

「実際は毎日千件以上の医師派遣要請の電話が入りますが、人員的、物理的に150件が限界。ほとんどをお断りせざるを得ない状況が今も続いていて、それが本当に心苦しいです」

 

陽性者の数は再び増加傾向に転じつつある。今も一般病院の医療体制の逼迫は続いており、そのしわ寄せが民間の訪問診療業者に行っているということだろう。この2年間、菊地氏をはじめとするスタッフたちの仕事は熾烈を極めた。菊地氏はもう1年ほど家族の待つ自宅に帰れていないという。

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