1日17時間勤務!休みなんて1日もなかった コロナ「訪問診療」スタッフたちが見た「孤独社会ニッポン」

壮絶700日の記録(後編)
根本 直樹 プロフィール

菊地氏が続ける。

「深夜帯がもっとも忙しいので、寝るのは明け方から昼にかけて。目が覚めたら、急いでシャワーを浴び、すぐに新規の患者さんからの電話応対と、すでに往診した方への経過観察の電話、その日のシフト調整などで午後は潰れます。そして夕方以降は朝まで1都3県を車で走り続ける。その間、インカム無線機で他のスタッフへの指示を出しながら、ドクターを患者さん宅に送り届ける。その繰り返しです。

決まった食事時間もなければ、休憩時間もありません。車内でコンビニのおにぎりを食べる程度。それはドクターも同じです。目が覚めてから寝落ちするまでずっと仕事。でも、医療の現場ってこんなものですよ。これが当たり前。疲労は蓄積していますが、正直、麻痺しているというか、慣れちゃいましたね」

患者宅に向かう菊地氏患者宅に向かう菊地氏

酸素カプセル室に入れ替わり立ち替わり

そんな過酷な職場で働くスタッフたちの強い味方が事務所奥にある「酸素カプセル室」だ。疲労がたまったスタッフたちが入れ替わり立ち代わり、酸素カプセルに入って酸素を吸入。リフレッシュしてまた業務に戻るという光景がいつも見られる。ドライバーの1人、望月祐介氏(29歳)はその効能を次のように語る。

「運転する前に必ずカプセルに入るようにしています。30分ほど仰向けになってぼーっとしているだけで、頭がすっきりし、やる気が湧き上がってくるんです」

患者宅に向かうスタッフ患者宅に向かうスタッフ

夕方6時半から朝7時までの仕事を週7でこなしているという望月氏。仕事以外の時間は寝るだけだという。辛くないのだろうか。

 

「ほんとに不思議なことにこの仕事ってやればやるほど、『休みたい』とか『遊びたい』という気持ちがなくなり、『もっとやらなければ』という使命感みたいな気持ちが生まれてくるんです。夜中にわざわざ電話してくる患者さんって、ほんとにキツくて、藁をもつかむ思いで電話してくるんですよ。そこに何とか応えたい、1人でも多くの患者さんの家を回って助けたい。だから今は、休むという発想自体がないですね」

事務局で働くスタッフの多くが、同じようなことを言った。「苦しむ患者がいる以上、プライベートなんてどうでもいい。目の前の患者の助けになること自体が嬉しいし、やりがいになっている。だからキツいけれど、辛いとは思わない」と。

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