1日17時間勤務!休みなんて1日もなかった コロナ「訪問診療」スタッフたちが見た「孤独社会ニッポン」

壮絶700日の記録(後編)
根本 直樹 プロフィール

2025年問題と「在宅医療」の現実

この先、仮にコロナが収束したとしても、日本社会を蝕む「孤独」や「高齢化」の問題がある以上、訪問診療(在宅医療)に携わる人々の過酷さは変わることはないだろう。ナイトドクター事務局に登録するドクターの1人、A医師も言う。

「今回のコロナ禍で浮き彫りになったのは、もはや日本の医療は病院だけでは立ち行かないという現実です。しかもこの先には2025年問題が控えている。コロナによってその脆弱さが顕になった日本の医療を根本的に見直す時期が来ていると思います」

患者宅に向かうスタッフ

2025年、戦後の世代としてもっとも層の厚い「団塊の世代」がすべて75歳以上となり、日本は5人に1人が75歳以上、3人に1人が65歳以上という、これまで人類が経験したことのない“超高齢化社会”に突入する。

地方ではすでに医療過疎の問題も起こっており、このままではまともな医療を受けられる人とそうでない人の格差がますます広がり、現行の医療制度は崩壊してもおかしくない状況がある。菊地氏も言う。

「既存の病院だけではもはや限界があるのは誰の目にも明らかでしょう。コロナ禍、発熱のある患者を断る病院が急増し、具合いが悪くても医療にアクセスできない人々が溢れました。そんな医療からこぼれた人々を微力ながら支えてきたのがわ我々のような民間の訪問診療業者です。コロナが終わっても、孤独社会、高齢化社会が進む限り、我々がやっているような在宅医療の重要性は今後ますます高まっていくと思います」

 

しかし、課題も多いという。菊地氏は続ける。

「国はすでに『病院から在宅へ』と医療と介護の政策転換を進めています。しかい、現場レベルではまだまだ働く人の“使命感”だけに頼っている現状があります。過酷な仕事だけに、人手不足は常態化しており、ごく一部のスタッフ、ドクターに過重な負担がかかっているのも事実です。こうした状況を変えていかないと、日本の医療は確実に崩壊する。現場に身を置いているからこそ、それがよくわかるんです」

菊地氏はそう語ると、「ちょっと行ってきます」と言って、酸素カプセル室に消えていった。

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