コロナ禍でテレワークは急拡大した。国土交通省の2021年度調査によると、会社員、公務員のテレワークの割合は27.0%で、2020年度に比べ4.0ポイント上昇。居住地別の調査では、首都圏が42.1%、近畿圏27.3%、中京圏23.0%、地方都市圏17.7%と続いた。
このテレワークを機に、浮気が露呈することも多いという。
キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子氏も「テレワークでの浮気調査相談が増えています」と語る。彼女は離婚調査に定評がある「リッツ横浜探偵社」の代表だ。「まず多いのは、スマホの通知画面を見てしまったこと。そして一緒にいることで相手の不自然な行動に気付くとうになるのです」と言う。この連載は、調査だけでなく、調査後の依頼者のケアまで行う山村氏が見た、現代家族の肖像でもある。今回はテレワークを機にそれまで「理想の夫婦」と言われていた夫婦の現状が分かった話をお送りする。
私立探偵、夫婦カウンセラー、探偵。JADP認定 メンタル心理アドバイザー JADP認定 夫婦カウンセラー。神奈川県横浜市で生まれ育つ。フェリス女学院大学在学中から、探偵の仕事を開始。卒業後は化粧品メーカーなどに勤務。2013年に5年間の修行を経て、リッツ横浜探偵社を設立。豊富な調査とカウンセリングを持つ女性探偵として注目を集める。テレビやWEB連載など様々なメディアで活躍している。
リッツ横浜探偵社:https://ritztantei.com/
結婚5年になる夫は、「息子のような」存在
依頼者・朱美さん(36歳)は、「テレワークで夫の生活がわかって、こうして相談に来ています。浮気って、いざそのことがわかると、脚が震えるくらいショックを受けるんですね」とおっしゃっています。
朱美さんは、理系女子のイメージをそのまま体現しているような女性です。黒のスーツ、メガネ、美しいストレートの黒髪の持ち主。就職活動中の大学生のような雰囲気もあり、20代と言われても納得してしまいます。
名刺交換をすると、超大手金融関連会社でシステム関連の部署におり、かなりの役職についていることがわかりました。まずは、夫婦関係について聞きました。
「夫は同じ年で、10年くらい前からお互いに知っていたんです。結婚は5年前で、彼は派遣社員をしたり、友達の会社を手伝ったりしています」
夫とは米国留学中にシリコンバレーのIT企業でともにインターンをしていたそうです。帰国後、朱美さんは現在の会社に就職。夫はゲームアプリの開発をしたり、会社を作っては売却したりしていますが、お金が手元に残らない人だそうです。
「結婚した年、私たちの上司だった人が日本勤務になり、みんなで集まったんです。夫は前から痩せていたのですが、再会した時はガリガリ状態でした。そのときに、痩せた理由を聞くと、仕事が忙しくて食事をしていないという。そこで私は夫の家に行き、料理をするようになったのです」
当時、お互いに恋愛感情はありませんでした。しかし、夫のために料理をふるまい、夫は朱美さんの作った料理を食べるうちに、2人の心もつながっていきます。
「夫は、親から育児放棄をされて育ったらしく、テーブルマナーが身についていなかったんです。当時、お箸を握るようにして持っていましたし、肘をついて食べることもありました。かつて夫が交際していた女性たちは、その姿を笑ったり、注意したりしたそうです。でも、私は自分が食べることに夢中で気にしていなかったんですよね」

夫は他人を心地よく見守ってくれる朱美さんに好意を持つようになりました。
「その後、“もう家に帰らないで。僕と一緒にいて”と言われて結婚。それから5年間、夫婦生活は幸せそのものでした。私にとって夫は息子のようでもあり、甘えられたり頼られたりすると心が満たされます。結婚はしましたが、子供は作らずに、ずっと恋人同志のように生活してきたんです」
夫はテレワークの前から自宅で仕事をすることが多く、朱美さんが帰ってくると「おかえり」と迎えに出てきます。
「子供というよりワンコのような夫なんです。毎日同じベッドで眠り、休みの日は散歩をしたり、バドミントンをしたり。友人からも理想の夫婦と言われていました」