2022.04.03

ラーメン二郎に通い続けると聞こえてくる「やさしさ」という“二郎の基本精神”

「たくさん、食っていきなよ」
堀井 憲一郎 プロフィール

直系店には、どの店もラーメン二郎の精神が貫かれている。

少しはずれたところへ行くと、ちょっと違う店内の雰囲気のところもあるが、でも基本精神はぜんぶ同じである。

私に聞こえてくるラーメン二郎の基本精神はこれである。

「食べられるなら、たくさん、食っていきなよ」

そういう声である。

 

「働いてるんだよ、時給330円で」

三田本店に行くと、「総帥」と呼ばれている創業者に会える。山田拓美氏。

先だってドキュメンタリー『ラーメン二郎という奇跡〜総帥・山田拓美の“遺言”〜』が放送されていた(2022年3月30日深夜・フジ系列「NONFIX」)。

カリスマ的存在である。

朝は、店に立ってラーメンを作っている。午後にも手伝っている姿を見かける。

厨房内の人が少ないときは、総帥自身が「助手」をつとめていることもある。

人が多いと、ただ立って喋っていたり、雑用をしていたりする。

いちど、日傘を運んでるのを見たことがある。

2020年の9月9日、30度を越える暑い日。

三田本店では、日射しのきついときには「日傘」を貸してくれる。列の最後尾あたりに日傘が大きなバケツにざっくり差されていて、それを借りて、並んでるあいだ、差していていいんである。入口脇に返すバケツがある。

その返された日傘の束を、最後尾のバケツまで、総帥みずからが運んでいたのだ。

そのおり常連客に、そんなことやってるんですかと声を掛けられ、嬉しそうに総帥は「働いてるんだよ、時給330円で働いているんだ、時給330円」と答えていた。

総帥は、いつも何だか楽しげな雰囲気の人で、おもいついたことを楽しそうに何度でも喋っている。見てるだけで楽しくなる。

時給330円と聞いて、中でラーメンを作っていた若旦那(総帥の息子)が、そんな安いわけないだろ、と呟いていたのだが、ずっと時給330円を繰り返していた。

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