できることなら指摘される前にしている

アトピーによる赤ら顔をからかわれて黙り込んだり、涙ぐんだりすれば場がしらけるのは、若いころにすでにたっぷり学んだ。酔っ払い相手に「顔が赤いのはアトピーの症状で……」なんて説明したって、誰も聞いちゃあいない。ここは、冗談で返すのが最適解。それが大人のリアクションなんだ、と自分に言い聞かせる。

「どうしてメイクをしないの? イマドキ肌に優しいコスメはいっぱい出てるし、それを使えば肌の赤味は消えるよ。そもそも人前に出るときメイクするのは、大人の女性のマナーなんだし」。先輩、ママ友、その他大勢に優しく諭された経験も数えきれない。そんなときは「あはは、ごめんねマナー違反で。もう私、女捨ててるし!」とヘラヘラ笑い飛ばす。こんなの、いつものことだから。

どの化粧品にかぶれるか、またどうにかできるものならしたいことも本人が一番わかっている…。photo/iStock

本当に親しい人は、私がアトピーであることや、これまでたくさんのコスメを試してはことごとく玉砕したこと、メイクすると翌日以降の肌状態がとんでもないことになることを知っている。だから世間話のついでにこんな忠告を私にする人は、極言すれば私にとって「どうでもいい人」「表面上のお付き合いの相手」である。それは忠告者にとっての私も同じだろう。なのになぜ、わざわざ親切ぶって諭すのか。心の中で「マナーも知らない肌荒れ女!」とでも罵って、放っておいてほしいと心から思う。心の中では何を思っても勝手だから。私もあなたも。

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私は自分がアトピーであることを隠していないし、アトピーも含めて私なんだと納得もしている。肌が汚いことを敬遠する人がいるのも知っているし、それを責めようとも思わない。けれど、わざわざ私の肌をネタにその場の笑いを取ったり、世間話のひとつ程度の感覚で忠告してくる人は「センスないなあ」と思う。だから、とことん不真面目な笑い話にして徹底的に流し、相手にしない。それが自分の心を守る唯一の防御策だと長年かけて知ったからだ。

でもずっとそんな言葉を投げつけられたときの自分が感じたごく小さな「イヤだな」、「悲しい」と思う気持ちを瞬時に押し込め、大人として流すうちに、自分の心の一部が石化したというか、少しずつ壊死しているように感じてちょっと怖くなる。できれば次の世代の人は、誰一人こんな思いをせずに済む世の中になればいいなと思う。