撮影中、泣き出してしまう人も…

宮本さんの写真展はメッセージ性が強いが、「そのままの姿」を見てもらいたいと考え、バイアスをかけないように撮影を行ってきたという。撮影中よくある「笑顔をください」「優しい表情で」といった声かけも一切しない。フォトグラファー側が狙ったテーマにならないことを意識していると話す。

ただ、今回の撮影では、1点だけ珍しくテーマをつけたという。「デモに行くつもりで撮影に来てほしい」ということだった。

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「テーマをつけるかは悩んだところですが、ウクライナ人の方と話すと、みなさん伝えたいメッセージがとても多い。だったら判断はご自身に任せて、デモに行くような気持ちで撮影に来られるのがいいと思ったのです」(宮本さん)

実際、撮影現場には、黄色と青のウクライナ国旗を取り入れた衣装の人もいれば、民族衣装を着る人、「NO WAR」などのプラカードを持つ人もいた。

「在日2年半という方が一番短くて、比較的長く日本に住んでいるウクライナ人の方が多かったですね。日本語が驚くほど上手な方もいました。でも、レンズを向けると、こちらは何も言わないですし、彼らも言葉にするわけではないのですが、心の内側にある怒りや哀しみが吐露し始めるんです。撮影途中で泣いてしまう方も少なくありませんでした。そして、撮影が終わるとほとんどの方が『私たちの想いを写真で伝えてくれて本当にありがとう』と再び涙される。今回もそうですが基本的に撮影するときに『感謝されたい』と思ったことがないので、これにはちょっと困惑しました。

さらに、果たして自分だったらどうなのだろうかとも想像してみました。私は長くイタリアに住んでいたことがあります。その当時、もしも日本で何かあったとしたら、同じような感情になったのだろうか、と。親族や友人が、ウクライナに残っている、他国に避難されている、と話す方もいました。ですが、在日歴が長い短いに関係なく、みな『ウクライナのことを知ってほしい』『理解してほしい』『助けてほしい』と最後まで話されていました。違う場所に住んでいても祖国を想う気持ちの強さにとても驚き、考えさせられました」(宮本さん)

写真/宮本直孝
写真/宮本直孝